蛍桜 |
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非現実的から現実的へ |
案の定、というかなんというか 赤ちゃんが居なくなりました 宣告されたときは ああ、15%のうちに入ってしまったのか と冷静に考えただけで 悲しみとかもなかったのだけど お姉ちゃんとかがセカンドオピニオンに行って 本当に死んでるか確かめてもらえば? 心拍確認が遅れてるだけかもしれないから 後から悔やむのも嫌でしょ? と助言してくれて じゃあとりあえずそうしようかなと思って 受付のお姉さんに 「セカンドオピニオンに行きたいので検査結果ください」 って言ってみて そしたらどうも勘違いされてしまったみたいで この病院の検査結果を信じていないというか 信用されてないというふうに受け取られたらしく 「分からないことがあった?」 と言われ まあ素直に 「よく分からないので(赤ちゃんが生きている)可能性を全て なくしてしまおうかと思って」 と言った瞬間、何故か泣いてしまった 何が悲しくてその瞬間泣いたのか分からないけど 受付のお姉さんは最後のエコーを持ってきてくれて 普通に育ってる人のエコーも持ってきてくれて あなたのは明らかに死んでいる、 セカンドオピニオンにもっていっても一緒だよ、 普通の人はこんなふうになってるのに あなたのは全然違うでしょ、って言われて なんかよく納得できなくて じゃあなんで私の子は、普通の人と比べて 違うようになったんだ?って思って 死んでいる影響がこういう形に出る理由って何だ? って考えて でもその時は結局分からなくて わからずやみたいになるのが嫌だったから聞けなくて 「わざわざお時間をいただきありがとうございました。 これで納得できたのでもう大丈夫です。 でも記念に最後のエコーをください。」 と言って、また号泣してしまいました そんな私を見て 若い受付のお姉さんも泣きそうになっていて申し訳ないなと思った 赤ちゃんはお腹の中で静かに死んでいたので 私は血液検査をして心電図検査をして 手術を受けれる下準備をして 私は納得できてないのに話だけが進んでいって 別に赤ちゃんが死んでいることを否定したいわけじゃなくて いつ死んで、なにがどうなったのか知りたくて まあ結局誰も教えてくれなかったわけだけど 私の担当してくれているお医者さんは おじいちゃんで何をしゃべってるのかよく分からない 口コミとか見てみると みんな 「何言っているのかわからないけど腕は確かで 無愛想だけど実はとてもいい人」 「看護婦さんが通訳してくれるから大丈夫」 って書いてて だからその人を疑ってたわけじゃないんだけど 私のお腹の中を見ている時に 「5日前くらいから死んでるな」 とかボソッというもんだから そこらへんの話もしっかり聞きたかったのに 看護婦さんに聞いても 「後からしっかりお話があるから」と言って誰も教えてくれなくて 結局本当に教えてくれなくて そして私は先生に怒られて 「一週間後に来いっていったよね? 今一週間後じゃないよね? こっちは理由があって一週間後に来いって言ってるんだよ」 って怒られて 私はネットとかで調べていて この流産は染色体異常であることとか 流産率は15%あることとか知ってたから まだなんとか、その言葉で追い打ちをかけられることはなかったけど でも、そうやって言われたことが 私にとっては相当ショックで もしかしたら私のせいだったのかもしれない、 って思うと余計にやるせなくて 仕事があるからどうしても言われたとおりには行けなくて だけど先生は多分 そうやって言われたとおりに出来ない人は 子どもを持つ資格がないと思ってるんだろうなって思うと悲しくて 軽蔑されているんだろうって思うと悔しくて 結局その後先生にいろいろ聞くことは出来なかった 少し出血があると伝えたら 「もう始まってる」と言われた 人間ってすごいなって思った 赤ちゃんが死んだらすぐに排出しちゃうんだね 診察してもらったのが土曜日で 日曜日は病院がお休みだから 月曜日に子宮口開いて火曜日に手術しましょって言われて 土日は家でごろごろしてたんだけど 日曜日の夜、お腹がすごく痛くて でもまあ我慢できる痛みで 流産経験者から聞いた話によると 赤ちゃんが出てくるときは相当痛いらしいから 「私が我慢出来ない痛みになったら救急車呼んで」 と旦那に伝えておいたのだけど あら不思議 もう赤ちゃんが出てきていた 私、痛みに強いんじゃね?って思った 出てきた赤ちゃんを見て グロテスクで でも愛おしくて これがエコーで見せてもらっていたものなんだって思って 言われてたとおり49mmほどで できればそれを分解して 中にいる赤ちゃんを見たかったんだけど さすがにそうするわけにも行かず お姉ちゃんや、旦那のお母さん(看護婦さん)に電話して どうしたらいいのか聞きながら 結局病院にも電話して指示をもらった 出てきた赤ちゃんはラップに包んで冷蔵庫で保存した なんかシュールすぎておもしろかった 火曜日を予定していた手術は月曜日になった もともと子宮口を開くためにとっていた一日は 赤ちゃんがほとんど出ていたことによって必要がなくなって すぐに手術をすることができた 子宮口を開くのってすごく痛いんだって だからそれが怖かった でも私はほんの少し開ければいいだけだったから 赤ちゃんを掻きだすための全身麻酔の間に全部やってもらえた これは私の良い解釈だけど 赤ちゃんは、私にとって一番痛くない死に方をしてくれた 全身麻酔から覚めるとき 体がふわふわして いろんな人の声が聞こえて体が運ばれて 最後にはほかほかの布団に包まれて まるで宇宙にいるようだった 遠い意識の中で 「旦那さんが来ましたからね」 と看護婦さんが言ってくれて旦那が手を繋いでくれた 結婚してよかったと思った 旦那が「意識あるの?」みたいなことを聞いてきたから 「うーんうーん」と唸って 「今何時?」って聞くと 最後の記憶から20分しか経ってなかった おもしろい 全身麻酔が完全に覚めるまでうだうだして 姉ちゃんと保険の手続きの話とかして 立ち上がれそうになったから歩いてトイレまで行って 大丈夫だったから服を着替えて 最後にお医者さんと会話して そこにはホルマリン漬けにされた赤ちゃんが居て 「写メとっていいですか?」って看護婦さんに聞いたら 「撮るもんじゃないよ」と言われたからやめて 一応赤ちゃんを検査に出してくれるらしくて でも、最後まで先生から 「あなたが原因じゃありません」 「流産率は15%で、よくあること」 っていう説明はなかった 術後、安静にするためにお休みをもらって 一日中ぐだぐだしてたのだけど テレビを見ると 流産はタバコのせいだと思ってタバコを吸う人を殺していく物語とか 出産感動物語とか ゴリラの出産物語とか 親ばか特集とか どのチャンネルも なんかもう嫌になる内容ばかりだった 本当はもう一日お休みをもらう予定だったけど 休みすぎても結局仕事はたまるだけだし 家に居ても楽しくないし 今日は仕事に行くことにした それが今なのです 赤ちゃんがお腹にいる間はすごく楽しかった 実感があったわけじゃないけど いろいろ調べて いろいろ考えて妄想して 赤ちゃん中心に物事を考えていたから すっとその時間がなくなったことがすごく寂しかった でもつわりもなくなって 電車も立ちっぱなしでよくなって 社員旅行にも行けるようになって 「自分一人の体」 になったことがなんだかおかしくて 非現実的な毎日が楽しくて 現実的な今にまだのめり込めない ふわふわしてる まだ麻酔がかかっているかのように 今回わかったことは 子どもを授かるというのはとても大変なことっていうこと だから中絶する人は 本当に贅沢だと感じた 私もしばらくは妊娠できない 気持ちだけが先走って はやくはやく、って思うのに 叶うことはない 今回の赤ちゃんに出会うことはもう無理だけど すごくすごく短い人生だったこの子が 次の人生で楽しい日々を送れたらいいなって思う 私だって自分を責めているけれど 責めててもどうしようもないし この赤ちゃんのことはずっと忘れない ってことだけを大切にしようと思う そんな短いマタニティライフでした |
2012年09月05日(水) |
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