蛍桜

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息苦しい世界は綺麗じゃないから

この坂を登りきれば
また見慣れた景色を見ることが出来る

だけど
この坂を登りきるまでに切れてしまった息は
私の呼吸を妨げる

あの坂道は好きじゃない

でもいつか、懐かしいなーって思える日が来るかもしれないし
もしかしたら当たり前になる日だって来るかもしれない

実家は山の上にあったから
暑い日も三段坂を登っていた
あの頃は息切れなんてしてなかった気がするけど
それでも坂を登りきったら心臓が苦しかった

自転車でなんて到底登れない
体力がない私には、努力しても届かない高さだった

車に乗るようになってから
その疎ましさを忘れていたし
もしかしたらもともと疎ましさなんてなかったのかもしれない

生まれ育った家に帰る道にどんな坂があっても
私は今までずっと登り続けてきていたし
それが当たり前のことで苦痛なわけじゃなかった気がする

幼稚園バスのお迎えも、坂を全て下った場所だった
園児だった私には、特に苦痛とか考える思考回路さえなかったけど
送り迎えしてくれた母にとって
あれは苦痛だったんじゃないんだろうかと思う

今思い返せば
母に悪いことをたくさんしたと思う

一人暮らしをしたら親に感謝するってよく言うけど
一人暮らししなくても私は親の大切さを分かっているし
ちゃんと大切にしてきたつもりだし
感謝もずっとしていたから、変わるわけないって思っていた

だけど、確かに、ちょっと価値観が変わった

毎日学校が終わって、母が休みの日は迎えに来てもらっていた
車に乗り込む度、「今日の晩御飯は何?」って聞くのが日課になっていた

母の料理は本当に好き
母の味が好きっていうより、普通に上手なんだと思う

だけど仕事もして家事もしてる母を労う言葉を
私は言えていただろうか?

ご飯を食べて、おいしいと思っても
おいしいだなんて言わなかった
いただきます、とごちそうさまは言っていたけども

今自分が作る立場になって
私みたいにご飯があるのが当たり前って思ってる人に
ご飯を提供するのは正直しんどいかも

仕事だってしてるんだよ、って
料理の時間さえなかったら、自分のために時間使えるのに、って

親が子どもに対する愛情ってどんなもんなんだろう
計り知れない

母がずっと犠牲にしてきた自分の時間を
私は分かってあげられてなかった

それなのに家事を手伝えなんてあんまり言われた記憶がない
母が家事や仕事のことで愚痴っていた記憶もない

なんでそんなに強く振舞えるんだろう

今の私は
私だって仕事してるんだから、って
自分の大変さを押し切ろうとする時だってある

でも、そんなの母には全然適わないよね

仕事も管理職にまで登りつめるまで頑張って
家事は手抜きはするけど、生活に支障はないしね(笑




小学校の頃、母が参観日とか仕事で来れない日がよくあった
それは特にさびしいとも思わなかった

たまに母が参観日に来てくれたりすると
いつも化粧しない母が、すごく化粧をしていることに違和感を感じた

でも今思えば、あれは
人より遅く私を産んだから
周りのお母さんが若くて
私が自分のお母さんが恥ずかしいと思わないようにしてくれていたのかな
って思うと「厚化粧ばばあ」なんて姉とふざけて呼んでいたのは
すごく申し訳ない気持ちになってくる

確かに超普段着で来られたら恥ずかしかったかもしれないけど
今だから言えるのかもしれないけど
私にとってお母さんはお母さんだから
いつまで経っても恥ずかしいなんて思わないよ、きっと



高校のとき、「自由にさせてよ!」って私が反発したとき
「自由にさせてよってなんやねん!」って私を痣が残るまで殴って
怒りのあまり着ている服さえ裂いた母を
少し軽蔑していた
確かに私が自己中な発言をしたけど
私にだって、私のやりたいこと、あったから
やりたくないこと、あったから
分かってくれもいいじゃん、って思っていた
私だって我慢したんだよ、って

でも母は、私以上に全部我慢していたんだよね
殴りたくもなるよね

そう考えると、今私が家を出てよかったかも、って思う
親に迷惑かけないですむのかな、って思う

ごめんねって


謝っても謝りきれない

私なんかいなかったらよかったね

でも、私が居て、お母さんは何かうれしいことあったかなぁ?


そうだったら、うれしいなぁ

そうじゃないなら、私はこのまま家に戻らないでおこうって思う


真実は分からないけど

いろいろ思い出すとごめんね、じゃ足りなくなる

本当に「悪いことをした」と思ってる


今まで多少なりとも思っていたけど
やっぱり家を出てから実感している


こんな娘で、ごめんなさい


2008年07月28日(月)

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