蛍桜

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にせもの

お父さんが生きている夢を見た


お母さんは死んでしまったのか
私は一人で暮らしていて
そこに姉がたまに様子を見にやってきていて
私はいつものように昼過ぎまで寝ていて
玄関のチャイムが鳴って
ちょうど家に来ていた姉が出てくれて
その姉が深刻な顔で私に
「お父さんが会いにきたけど」と伝えて

多分夢の中ではお父さんは死んだわけじゃなくて
家を出て行ったとかっていう設定で
会うのを拒否することも出来たけど
私は悩みもせずに、「会うよ」と告げて玄関に出た

そしたらそこにはお父さんじゃない若い男が居て
「あ、ちょっとまってね」なんて言う
若い男っていっても、私より全然年上で
だけどお父さんの年齢に比べたら全然若いっていう程度で
私は心の中でその男の存在を薄々理解していた

その男に手招きをされたお父さんが、私の前に歩いてきて
深刻な顔で、謝る
だけど私は憤りも感じなければ、情けも感じず
ああ、この人がお父さんなんだと理解するだけで
ただお父さんが連れてきた数人の男女を見るだけだった

お父さんは言う
これは俺の息子と娘だと

一番初めに見た、30くらいの男
高校生くらいの女
私と同い年くらいの男

この3人が、私や、お母さんの前から
姿を消した原因だと語る父を、ただ見ていた

私は思考を巡らせた
この人たちは、全く知らない人たちで
この事実を知らないまま、この男性と恋に落ちて
子供を産んだら、遺伝子異常の子供が生まれていたところだったのか
とか、母親が違う義理の兄弟たちを
私は自分の「何」として受け止めたらいいのだろうか、とか
適当に無意味に考えていることしかできなくて

後ろを振り返れば
明らかに嫌悪の顔で見る姉の姿があって

姉にとって父は、本当の父ではないから、
私と同じ感情なんて決して抱けるはずもなくて
今の私の感情の名前を聞こうとしても、それは無意味なことだった

父は言う
別に帰ってきたわけじゃないんだ、と
理由を話しておきたかっただけなんだ、と

私は笑いもしなかった
父が居ても、居なくても、私には関係ないんだ
父が死んでいても、生きていても、
私にはなんの関係もないんだ

だって玄関に立っている父と名乗るその男は
血が繋がっていたとしても
私にとっては父なんかじゃなかったから

そうやって考えてみると
私が知っている父の顔と
その男の顔は全く違う風に見えた



ばいばい、ばいばい、

あんたの温もりなんか、初めから求めちゃいなかった
私の記憶を、汚さないで


2007年11月08日(木)

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