蛍桜

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海、蝶、雪、声、そして私はサナギ

大きな音を立ててCDが再生される
その音に少しかき消されそうになりながらも
力強く音楽が奏でられる

その音楽は
中学の時後輩から教えてもらった人の音楽
これを聞くたび中学の
そう
まだ今よりも幸せだったころのことを思い出す

幸せ?
違うかな
でも今はその言葉でしかまとめれない
だって
今はないものがその過去にはあったから
それは幸せだと思ったから
今はそう言わせておいてください



海を渡る
船を使って
私は一生懸命漕ぐの
でも船は進まない
波が私を岸に戻す
また漕ぐ
いつになっても景色は変わらないのに
前に進みたいと思った
ただ漠然と
前に憧れていた
でも確実にその憧れに近づいてると思った
少しずつ
何もしないよりは
少しずつ
近づいていると思った
だから漕ぎ続けた
いくら前にすすまなかったとしても
やるとやらないじゃあ
ゴールへの近さが違うから
何もやらないままならずっと0だから
少しでも1に
今は1に
近づきたいって思った



蝶は羽ばたいた
どこにいくのかは知らないけど羽ばたいた
私の目の届かない場所へ
私から逃げたかったの?
悲しそうに聞くけれど
蝶は何も答えなかった
ちぇっ、泣き落としは聞かないか

しょうがないから私も蝶が飛んでいったほうへ
走っていった
追いかけるように
別に蝶を追いかける理由はなかった
でも
あの蝶が羽ばたいた理由
それはきっと自分が走る理由と同じだから
追いついたとき
きっと蝶は笑うだろう
ほめてはくれないだろうけど笑うだろう
私は楽園を目指しているわけじゃなかった
だけど
あなたと私
君と私
ここにいるんだから
ね?
蝶はどこまでも羽ばたいていった
私の目はもう彼を見失ってた
花畑があった
君はいなかった
私は走り続けた
君を探すというたてまえで
私は走った
本当の理由など誰にも知らせるわけでもなく
自分に分からすわけでもなく

この河を越えたら君はいるかな?







雪が降った
季節外れの雪が
雪は白いようにみえるけど
時には青く見える
雪は冷たいけれど
時にはあったかい
雪はやわらかいけれど
時に硬くなる
雪の中僕は歩いた
どこに向かうわけでもなく
ただどこかに歩いてた
まずはとりあえず駅にでも行こうかと
空が言った
駅で電車に乗ると
とりあえず終点まで行こうかと
空気が言う
終点まで行くと
お客さん終点ですよ
と車掌さんが言う
見覚えのある場所なんかひとっつもない街に
僕は降り立った
何をするわけでもなく
ただ止んだ雪を見ていた
どこからか誰かの声が聞こえる
もう僕は誰の声も聞き取れなくなっていた
空は何か言ってるのかい?
空気は何か言ってるのかい?
自分の声も聞こえなくなってしまった
誰の声も聞こえてこない
そう、声は

心は聞こえてくるよ
僕の心も聞こえるだろ?

―――あなたのそばにいていいですか?








やさしくしないで
やさしくなんて
やさしくされるほど偉い人間じゃないんだから
ううん
そんなことじゃない
やさしくしないで
やさしくされたら悲しくなるから

あなたを嫌いになったんじゃない
ただやさしくされたくなかった
私にはやさしさが辛すぎた痛すぎた
太陽は私を照らすけど
私なんかを照らさないで
謙遜しているわけじゃない

――ただ…

今は1人で居たいだけ
今は自分を見つめたいだけ

誰にも頼りたくないから誰とも会いたくないから
お願いだから
やさしくしないで…痛いよ







私はまだサナギのまま

2002年08月26日(月)

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