| 蛍桜 |
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| 森の中で |
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すごいな、って私が言ったら あなたは怒るかな? 私はすごくなんかないんだ、って怒るかな? でも、私からみたあなたはすごいんだから しょうがないじゃない? でも、私もすごいね、って言われたら きっとすごく心の中で怒ると思う。 だってその人が言っている 「すごい」が私にあわないことを分かってるから。 その人が見ている「私」は 本当の私ではないこと分かってるから。 それでもほんのり嬉しくなるのは たとえ、どんなにちっぽけなところでも それは私の一部なんだから 私の一部をすごいと言ってくれてるんだから ちょっとだけ、存在を認めてくれてる気がするからなんだ。 いつのまにか私は どこか深い深い森の中に迷い込んでしまってた。 いや、今も迷い込んでいるのかな? ずっと前から迷い込んでる。 でも、ちょっと違うんだ。 ずっと前は行き場所もなくってすることもなくって したいこともなにもなくって どうすればいいのかもわからなくなって ただ森の中を歩くしかなくって 何も考えずに歩くしかなくって そのまま疲れ果てるしかなかった。 ただ、疲れるだけだった。 でも、その森の奥にはぬくもりのある広場があって 夜になっても月明かりが照って ずっとずっと光に照らされて 暗闇の中に取り残されることのない広場があった。 タキビして、みんなで円を描いて。 みんなって誰だろう? そんなことさえ考える暇もないくらい楽しかった。 その「みんな」の名前を覚える暇もないくらいに。 そしてその人たちが消えても 私は何も感じなかった。 何も知らなかった。 だって名前、知らなかったから・・・ 消えたことに気付かなかったから・・・ その大切さにまったく気付かなかったから・・・ だからみんなが消えてしまった今 私は独りとりのこされて また再び森を迷い始めた。 みんなが消えると同時に消えたあの広場を探して。 大切という言葉を捜して。 そして、本当の私を探して。 いつか照らしてくれた月明かりを探して。 どこまでも続く森を歩く。 出口の見えない森を。 さようなら、といえばよかった? それとも、いかないで、といえばよかった? 過去のことをそう思っても どうにもできないことは分かってるけど もし私が 「さようなら」 といってしまえば そのまま私は「終わり」を迎えるだろう。 もし私が 「いかないで」 といってしまえば みんなはそんな私を重荷に感じて 悩んでしまうだろう。 みんなはどうして広場から出て行ったと思う? どうしてみんなお別れをしたんだと思う? それはね きっと何か意味があるんだよ 私もその意味を知ってるよ だけど・・・ 口には出したくないんだ 私はまだ、その意味のために動く事はできないから。 まだひとり立ちできない雛だから また広場を探すんだ。 前いたみんなはもういないけど 新しい仲間を探してみるんだ。 そしてまたみんなが消えたとき 私はいったいどうするんだろう・・・? さよならと 口に出してお別れを言ったあなたは 未来の私なんだと気付くのは きっとさよならと口に出すときなんだろうね。 もし私がさよならするときに いかないで、といわれても 私は迷いなく月明かりの無い森の中にいくだろうね。 そうやってぐるぐるまわるの。 誰かが誰かにさよならを言わず去り 誰かが誰かにさよならを言い 誰かは森を迷い続ける そしてきっと みつけだすんだ。 I find now. |
| 2002年07月01日(月) |
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