| 蛍桜 |
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| 大嫌いな彼 |
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今日はよく彼に会う。 会いたくないのに、会ってしまう。 あぁ、いやだ。 といっても、これは偏見になってしまうのだろうか。 だが、見るたびに叫んでしまうほど 私は嫌いなのでしょうがない。 なのについさっき、じっと眺めてしまった。 あの動きがたまらない。 もう、殺そうと思っても殺せないほどに、 触るのさえ、恐ろしいほどにキライだ。 今日の朝、いつもなれた扉を開ける。 彼は私の頭に着地した。かと思うと床に不時着。 彼は私の前に姿を現した。 父にあげるはずだったご飯を床に落として叫ぶ私。 マイペースで姿を消す彼。 朝っぱらから、最悪だ。 頭には彼の感触がある。 目には彼の何本もの足が動いているのが焼きついている。 あの長い胴でたんすの奥へと逃げていった。 私の叫び声など聞かずに。 そして、私が泣いているということもしらずに。 しばらく彼とはお別れだ。 なんせ、彼なんかのいない学校へ行くのだから。 案の定、学校には彼の姿はなかったし、 叫ぶような事もなかった。 安心して、家に帰ってくる。 家の前で自転車を止めたが自転車が倒れた。 暑い中、その自転車を直し、 愛猫がえさをくれと、えさ置き場に座っていたので よし、やろうと意気込んでえさ置き場のある台所へ行った。 そこに、彼が居た。 何をしているのかわからなかったが、 流しの上で遊んでいる。くねくねと。 どこに行こうか迷っているようだ。 見ているに耐え兼ねない。 しかも、今にも流しから、床に落ちてきそうな体勢だ。 私は彼が落ちてきてしまったときのために、 彼が着陸するであろう場所の近くにいる愛猫を こっちにおいで、と促した。 だが、そんなことをしるよしもなく、 早くえさをくれ、というように私を見つめるしかしない愛猫。 あぁ、どうして気付いてくれないのだろう。 15年一緒にいるのだから、 これくらいわかってくれたもいいのに。 (言葉だって、時々通じるのに・・・) 彼が落ちてくる前に愛猫を抱きかかえようとしたが、 そうする直前に、彼が愛猫から少し離れた床に落ちた。 ポト、といやな音を立てた。 それでも愛猫は気付かない。 私は凍り付いてしまった。 あぁ、愛猫が刺されませんように。そう祈るだけだった。 その祈りが届いたのか、 彼は愛猫がいる方向とは逆方向に行った。 どこかいく彼の後姿をみながら、吐き気をする思いで、 愛猫にえさをついでやった。 そして今、ここに座っているのである。 いつ彼がまた現れるのかわからない。 だが、そのときはきっと、また固まってしまうだろう。 あぁ、どうすればいいのだろう。 あぁ、どうしてこんなに彼が嫌いなんだろう。 |
| 2002年05月13日(月) |
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