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2024年09月08日(日) |
蒼天抗露(エストニア エクストラタリン) |
出国審査。EU民のブースと外国人のブースとあり、外国人のブースに並ぶ。パスポートを見せ、スーツケースを預ける。続いて手荷物検査。それも通過すると免税店がいくつか並ぶ出発ロビー。時節柄そうなのか、迷彩服を着た軍人の姿をたくさん見かける。添乗員氏が深刻そうな顔をしてツアー客に告げる。
「ひょっとしたら、我々が乗る予定の便、飛ばないかもしれせん。」
「その場合どうなるのですか?」
「タクシーで市内に戻って、航空会社が確保した宿でもう一泊ということになります。」
添乗員氏の読みは当たった。搭乗時刻になっても登場すべき飛行機の姿はなく、搭乗の案内はされず、しばらくして添乗員氏から、「欠航が決まりました。ついてきてください」と言われ移動。まず、先程預けたスーツケースがベルトコンベヤで吐き出されてきたのを各自回収。次に、
「代替便の交渉をします。先程のブースに各自再度並んでください」
ブースは長蛇の列。しかも列はなかなか進まない。ここで、「代替便の案内、その航空券、もう一泊するためのホテル案内、そして、ホテルまでの往復のタクシー券」の案内がされる。ここで添乗員瀬田氏が掛け合って、無事にそれらを獲得。しかし、なんと全ツアー客18人のうち、14人がフランクフルト経由で羽田へ、そして残る4人と添乗員瀬田氏はヘルシンキ経由で成田という代替便を指定されるということになった。
ともかくも、タクシー券は一人に一枚ではありません。4人一組になってタクシー券でホテルに行ってくださいねということなので、タクシーを捕まえる。ノーと言われる。
「タクシー券が使えるのは黄色いタクシーのみと添乗員さんが言ってました」
歩き回ってようやく黄色いタクシーを見つけ乗車。この時点で、来た時青空だった空港はすでに暗くなっていた。時刻は8時くらいだっただろうか。
案内されたホテルは「スイスホテル」、一回のロビーの天井が高く、昨夜のKGBホテルと同等か、もしくはそれ以上ではと思われる高級ホテル。ツアー客全員の集合を待ってフロントで受付。添乗員が代表して全員分受付してくれる訳ではなく、フロントの男がひとりひとり英語で説明をする。「一人なのか、連れがいるのか?」くらいまでは答えられたが、長文の英語なんて分からないという顔をしていると、フロントの男は、「誰か英語の分かる奴はいないか?彼に説明してやってくれ」と声をあげ、添乗員氏の出番に。「食堂は30階、メニューは20ユーロまでは無償。超えた分は自腹、酒類は自腹。等々」
割り当てられた部屋1305室は大きなダブルベッドが鎮座する、おそらくはスイートルーム。
日本の旅館とは違い、浴衣が部屋に備え付けられているわけではない海外のホテルだが、この部屋の浴室にはバスローブが備えてあった。もともと日数分の下着しか持ってきていないのでこれは有難い。
30階の展望食堂へ。バーのような空間。メニュー表を見る。「前菜」「主菜」などと書かれている。「主菜」に記された中から、20ユーロに満たない値段のものを探す。18.5ユーロの「マッシュルームの何か」を選ぶ。(マッシュルーム以外は読めなかった)マッシュルームを使った何かの料理だが、果たしてどんな料理が運ばれてくるのだろう?
出された料理は、ひだの部分を上にして焼いた椎茸の上にとろけるチーズが乗り、生野菜をきれいに散らして彩ったもの。西洋のレストランでは、テーブルの上に乗ったパンは無料で食べ放題という話を聞くが、ここにはそれらしきパンは見当たらず、おかずだけの夕食。
食事が終わり、会計方法を添乗員氏に聞く。
「部屋番号と食べた食事をレジで言ってください。」
部屋番号は確か1305だったっけ?持ってきたルームキー自体に部屋番号は記されておらず、部屋番号、多分1305だったと思うんですけどと言うと添乗員氏、「多分じゃダメです」と、私を連れ1階のフロントに行き、部屋番号を確認し再度食堂に戻るという荒業。
明日の代替便は朝6時半発。そのため、朝4時にホテルを出てタクシーに乗ると添乗員氏には説明されている。当然、朝食の提供はなしということになる。絶対に寝坊が許されない早起きの為、さっさと風呂に入って寝ることにする。部屋の窓からは青と黄色の2色にライトアップされたオフィスビルが間近に見える。特等席だ。写真に収め、睡眠時間は4時間半かと確認して寝る。
フロントで添乗員氏が黄色いタクシーを呼び、朝4時、何台かに分乗して予定通り空港に向け出発。自分が乗った黄色いタクシーの同乗者は、同じく欠航で一泊を余儀なくされた外国人グループ。
まだ一名分席が空いているよということで乗ることになった。
空港で、昨日並んだブースに再度並び、出国審査、手荷物検査やり直し。同じ列に、あのHISツアーの一行の姿も。彼等も昨日同じ目に遭ったらしい。そして、彼等のグループは幸運にも全員が「フランクフルト経由羽田着」の代替便を割り当てられたそう。
ヘルシンキ経由が割り当てられた添乗員氏とはここでお別れ。あとは添乗員なしでフランクフルトで日本行きの便に乗り換え、帰国しなければいけない。
フランクフルトでの乗り換え便の搭乗ゲートの番号を教えてもらい、窓口でパスポートを見せれば日本行きの代替航空券を発券してもらえると教えてもらったが、今、手許にフランクフルト発の航空券がないのは、はっきりいって不安で仕方がない。
手荷物検査場を過ぎて出発ロビーまで来ると、疲れた表情で椅子や壁にもたれかかっている搭乗客を何人か見かけた。着の身着のままでこの場所で一晩を明かしたのだろうことが明らかだった。交渉力とか語学力、それに頼もしい添乗員の有無が昨晩の明暗を分けたのだろうか?
出発までの間、日本から持ってきた煎餅を食べる。いつか日本の食べ物が恋しくなったら食べるように一袋持ってきたのだが、恋しくなることはなく、とうとう最終日まで食べないままだったが、朝食代わりに今食べるしかない。でも、それだけでは腹を満たすには至らず、売店で袋に入ったクッキーのような菓子を買う。見た目適正価格100円程度のものだが、7ユーロ。1000円超。
やがて搭乗。初めて乗るルフトハンザ航空。片道2時間半ということもあり、配られたのはペットボトルに入った水だけで、機内食はなし。窓から遠い席で下界の様子は分からないが、西に向かって飛んでいるせいで、夜明けが長く続いている感じ。飛行機が高度を下げた。フランクフルトは朝もやに包まれているようだ。着陸。
タラップで滑走路に降り、迎えのバスで空港建屋に向かう。近くに見える作業車両にはベンツのエンブレムが光る。日本ではありえないベンツの作業車両の写真を撮りたいが、どうしてもほかの乗客が視界に入ってしまうので撮れずじまい。
乗り継ぎ窓口に行き、係員のいるブースでパスポートを差し出すと、機械で何か読み取って、日本行きの航空券を発券してくれた。これで安心。
乗り継ぎ時間は4時間ある。空港内の売店で小瓶のビールを2本買い、カウンターで飲む。日本円換算でおよそ1500円。日本ではビールなんて自分で買って飲むことはあまりないのだが、この旅行中は毎日のように飲んでいる。多分、気温と食べ物のせいだろう。あと、冷たい緑茶がなかなか売られていないせい。
しばらくしたら酔いが冷めてきたので、免税店で500㎖の缶ビールを買う。レジ店員は、一目でそれと分かる被り物をしたイスラム女性。彼女にとって、酒を売るのは不本意だろうけど、仕事だから我慢してくれ。私には今これが要る。店員は慣れているのか、無表情でバーコードを読み取り売ってくれた。5.25ユーロ。タリンのスーパーの3倍半の値段。
値札には5ユーロって書いてあった筈なんだけど、おかしいな、と思いつつ払い、蓋を開ける。缶をよく見ると、0.25ユーロがどうのこうのと缶自体に表示されていた。本体価格とは別に、環境保護かごみ対策かなにかの為に、0.25ユーロ上乗せされることになっているものと理解。
今度の代替便は全日空。「○○様、○○様、搭乗ゲートまでお越しください」待合ロビーに、外国人社員が話す、くせのある日本語放送が流れる。
そして搭乗。機内の放送も日本語と英語。機内食には白いご飯。そして、到着地での日本時間にああわせ、出発後しばらくすると機内の照明は落とされ、日本時間に合わせてみんな寝てくださいということだろう。時差ぼけにならないよう、眠る。
そして半日遅れで日本に到着。偶然とはいえ、代替便の到着空港が羽田になったのは有難い。
最後に残った心配があった。スーツケースの中にはリチウム電池を入れるなという指示が出ていたので充電器などは機内持ち込みとしたが、持って行ったノートパソコンをスーツケースに入れてしまっていたのだ。ノートパソコンのバッテリーとしてリチウム電池が使われているはず。無事にベルトコンベヤーからスーツケースが出てくるまで心配だった。
スーツケースを回収し、ツアー仲間に別れを告げ帰宅。風呂に入ったら、日本の暑さと湿気でふやけた肌から大量の垢が出た。滞在中も毎日入浴なりシャワーなり入っていたのに。
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