蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2009年03月06日(金) おい、私。

文藝春秋2008年3月号に川上未映子『乳と卵』芥川賞受賞インタビューがある。その一部にこんな話がある。以下、孫引きで失礼(あとで図書館で借りて調べるから!)

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聞き手:今の30代の女性は、結婚や出産に後ろ向きと言われています。その理由は「他人とは共同生活を送れないから」とか「子供を育てる自信がないから」とか報じられていますが、同世代としてどう思いますか。

川上未映子:私たちの世代は、産みたくないというよりも、「産む」ということについて考える時間が、図らずも長くなってしまったんですよね。昔は生理が来たら<子供>から<大人>になり、間もなく結婚・出産して<母親>になった。<大人>の期間はせいぜい12、3歳から22、3歳くらいの10年だった。ところが、今は結婚するのが遅くなり、20年近くもある。2倍あるんですから、考えてしまう時間も悩みも増えるわけです。今の私の結論は、考える前に子供をつくらないと子供は出来ないということですね。この時代、避妊も追いつかないくらい燃え上がっているときでないと、子供はつくれないような気がします。私たちの世代、出来ちゃった婚しかないと思いますよ(笑)。

聞き手:川上さんも結婚されていますが。

川上:はい、と言いながら子供については私は出遅れた感があります(笑)。

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実にさらりと本質をついておられる。川上未映子とは歳が近いこともあり(彼女は1976年生まれ)、考えていることとか物の感じ方とかがときどきハッとするくらい似ている。彼女の文章を読んでいて、何で知ってるの!バレてるし、と思ってしまいそうにもなる。

子どもどうする問題はもう長いこと燻り続けている。「何も決めない」とだけ決めたまま時間だけが過ぎていく。問題は形を変えずにずっとある。そしてときどき頭をもたげては人をドヨーンと落ち込ませるだけ落ち込ませて、しばらくすると小さくなって見えなくなる。ひとりで勝手に怒ってひとりで勝手に落ち込んでバカみたいだ。

歳が歳だけに、黙っていても今日もどこからか妊娠や出産の話が聞こえてくる。聞こえてくるなんてもんじゃない。赤裸々に語られる。にこにこ笑って興味深げに話を聞いたり質問したりしている私の顔はひきつっていないだろうか。ぐちゃぐちゃの感情をうまく隠せているだろうか。

自分の現状はともかく、知り合いの妊娠くらい素直に喜べてもいいんじゃないだろうか、そろそろ。おい、私。


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