蜜白玉のひとりごと
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もうほとんど月次報告のようなひとりごと。
むさぼるように本を読んでいた昔に比べると、ここ数年はほとんど読んでいないに等しいようなものだとずっと思っていた。読まなくなったはじめの頃は、(時間がないとかで)読みたいのに読めない、のだと思っていたけれど、そのうち、(本当に)読みたいのか?と疑うようになった。
実際、図書館で借りてきた本を開いても、あまり頭に入ってこない。文字を追っても、心に何も残らない。物語は私の横を素通りしていくだけで、読めば読むほどむなしくなった。いくら生活スタイルが変わったとはいえ、それにともなって読書の習慣さえ失いそうになっていた。
だからもう、たくさん読もうとはしまい。折々、開きたくなる本があるだけでじゅうぶんではないか。
そう考えを変えて、読みたい本がないときはあえて探そうとせず、いっさい読まないでいた。そうして野放しにしていると、その時々で読むべき本が何なのか、自然とわかるときがくる。不思議だけど、必ずくる。
もう何度目か、須賀敦子の作品を読んでいる。須賀さんの文章は美しい。取り立てて凝った文章ではないけれど、でも書こうと思って書けるようなものではない。今はゆっくり、かみしめながら読んでいる。生活する者としての強さが感じられるのが何より私にはうれしい。
何年振りかで本棚から取り出した『コルシア書店の仲間たち』は、ページのふちが薄茶色に変色していて、私の時間がこれだけ過ぎていったのだと、目に見える時の流れをどうしてだか微笑ましく思った。
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