蜜白玉のひとりごと
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がんばれると思って出勤した今日。
昨日あんなに考えて、最後にはすがすがしいまでの気持ちになったというのに、またこの場所に身を置けば元の木阿弥、いつものようにいらいらと腹を立ててしまうのではないかという考えがちらっと頭をよぎる。
でも、そうはならなかった。そうならないように細心の注意を払った。呼吸を乱さずに平均台を一歩一歩進むような感じだ。目の前で繰り広げられることはいつもとそう大して変わらないのに、私の心は静かだった。ときどきバランスを崩して、うんざりのため息が出そうになっても、そうだ、諦めたんだった、諦めたんだから許せる、と思い直せばすっと醒めていく。愛想のいい返事、気の効いた冗談、笑顔。その間、強がって無理しているとき特有の、つらさや寂しさはなかった。これならいけるかもしれない。そう思った。
外側からは何も見えないだろう。でも私の中では大きな変化があった。まだ慣れきっていないので気は抜けないけれど、自分を壊さずに、穏やかに、余計な波風を立てず、くぐり抜けようと思えばできないことでもなさそうだ。
川本晶子『刺繍』読了。
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