174 路地 |
「路地」について話をしよう。 村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』で路地について出てくる。主人公の家の裏庭から塀を乗り越えると、裏道としてその路地があるんだけど、不思議なことにその路地には入り口もなければ出口もない。その路地で主人公が猫を探すところから物語が始まるんだ。 先日、自分がイメージしてたその路地と同じような路地を見つけた。残念ながら、というべきか、その路地には入り口も出口もあるんだけど、そこは小説を読んで思い描いていた路地に似ていたんだ。いや、というよりも、その路地に入ったときに、「あ、あの路地だ・・」と感じた。 道幅は狭く、花壇などが置かれて人が通ることが困難なくらいで、人が通る気配は感じられない。どの家にとっても家の裏側で、道を使う利便性が感じられなかった。 そんな路地を通ると、不思議な気持ちになる。どうも落ち着かないんだ。両側にそびえる崖のように家々が建ち、そこのベランダや窓から誰かが俺のことを見てるんじゃないか?って思えてしまう。こっちはどうにも行き場のない気持ちになり、何か悪いことをしている気がする。人の家の裏をとって、誰かに冷たい目でみられそうな気持ち。やましいことなんてなにもないのに、ひどく落ち着かなかった。 でも、そこに留まることはイヤだったけど、路地を通るっていうのはいい。狭い空間に押し込められたあれやこれやって、何かわくわくさせるものがあると思う。どこか知らない土地にいって、ものすごく狭い路地に出会うと、なぜか少し嬉しくなる。 今度路地を探しに行こうかな。理想的な路地がどこかにあるはずだ。
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2004年05月20日(木)
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