17 羊飼いのいる風景 |
なんの偶然か、『羊をめぐる冒険』を読んでいる最中に、目の前のスクリーンに羊が映し出されていた。俺はよく授業中に退屈してしまうと、本を読む。 映像には、ウェールズ地方の広大な土地で、羊飼いに飼われる羊の群れがいた。羊飼いはなぜかいつも俺に「ハーメルンの笛吹き」を連想させる。ちょっとした丘の上から、街を見下ろすことができる。羊飼いは笛を吹いて、羊は仲間の群れにもみくちゃにされながら、柵の中におさまっていく。残されたのは真っ黒い牛が数党と、犬。 見渡す限りの牧草地で働く羊飼いを遠くに見える街は、優しく見守っているようだった。世の中にはこんな世界もある。遠い国の話ではあるが、今、この同じ時間の流れの中、羊飼いは羊を柵の中へと導き、俺は言葉を文章へと導く。
|
2003年05月14日(水)
|
|