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2005年09月06日(火) 辛気くさい映画

辛気臭い【しんきくさい】
(主に関西地方で)思うようにならなくて、じれったい。
気が滅入ってしまうさまである(三省堂「大辞林」第二版より)


このところビデオショップというと、
「次女の好きなアニメのDVDを借りるところ」
と化しつつありますが、
最近、久々に借りた一般映画
「世界でいちばん不運で幸せな私」は、
一言では言えないユニークな表現手法で、
なかなか楽しませてくれました。
だから、早速それについてここで御紹介を、
とも思ったのですが、
文章を書き始めてから、
もう少し違う内容について書きたくなりました。
(つまり、前置きにするほどの内容でもなかったわけですが。
まじめに読んでくださった方、申しわけありません)


以下、うっとうしい自分語りが続きますので、
「別に読んでやってもいいけど」とおっしゃる
酔狂な寛大な方のみ、おつき合いくださいませ。


ビデオショップで
「今日こそ、“大きいお友達”好みのアニメじゃなくて、
フツーの大人の映画を見よう」と決め、
大量のソフトを目の前にすると、
よく、こんなことを考えている気がします。

「何かこう、辛気くさい映画が見たいなあ」

全く説明がつかない気持ちです。

浮ついた気持ちをクールダウンしよう、
と思っているわけでも、
ダウンなときは徹底的にダウンになろうと
思っている…わけでもありません。
ごくごく普通の気持ちのときです。
どのくらい普通かといえば、
次女を乗せた自転車で平常心で走り、信号もきちんと守り、事故も起こさず、
ちゃんとソフトの「中身だけ」持ってレジに向かい、
言われた金額に対して過不足なく払い、
お釣りが発生したときでも、間違いなく受け取り、
もしもお釣りに間違いがあった場合、
少なければ「○○円出したので、お釣りは△△円では?」と冷静に指摘し、
多ければ、潔く返す。
そしてちゃんと返却予定日を覚えていられる、
というくらい普通のときです


逆に、「むしゃくしゃするから、スカっとする映画が見たい」
と思うことは、
皆無と言って差し支えないほど「ない」のです。
実際、生活の何割かは、
「むしゃくしゃ」で構成されているはずなのに。

そこで、検索エンジンを使って、
「辛気臭い(または「辛気くさい」)”映画が見たい」で
調べたところ……
当然といえば当然ですが、全く該当ナシでした。
「辛気臭い(または「くさい」)で調べたら、
合わせて140くらいヒットしました。
どんな文脈で使われるかというと、
「辛気くさい映画かと思ったら、そうでもなかった」とか、
「どんな辛気くさい映画かと覚悟して見たら…」というのが多かったので、
世間では、辛気くさい映画の需要は高くないということがうかがわれます。
その割に、うちの近所のビデオショップでは、デンマーク映画
「しあわせな孤独」がいつもレンタル中なのは、
一体どうしたわけなのか


ところで、世間様の言う「辛気くさい映画」って、どういうものなのか?
これも人によって解釈や定義づけがさまざまらしく、
洋の東西を問わず、さまざまな作品名が挙がっているのですが、
かなり大雑把にいうと、「(ほのぼのしない)人間ドラマ」ってことになるようです。
アクションシーンが(少)なくて、オシャレ度・娯楽度が低くて、
ついでに、キャストも地味だったりすると、言うことないようで。
派手な人間ドラマ(往年の『風とともに去りぬ』とか)もありますから、
ここにもう一つ、
「非ハリウッド単館系」なんてのも加えるべきかもしれません。

要するに、少なくとも現在の私にとっては、
映画を見る=辛気くさい気持ちになる
この式が成り立ってしまうようです。

ところで、ここは腐っても映画紹介日記コーナーです。
私的選りすぐり「辛気くさい作品」を
御紹介差し上げたいと思いますので、
ぜひともごらんになって、ダウンな気持ちを味わってくださいませ。

桜桃の味
1997年イラン アッバス・キアロスタミ監督

「あること」を実行するための助けになる人を求め、
車を走らせるひとりの男。
男と絡む人物や演出を見る限り、かなり実験的な作品ですが、
難解というほどではありません。
ただ、ほどほどに若いとき(30前後)に見てしまうと、
もう少し枯れてから、もう一回見てみようという気になります。

列車に乗った男
2002年フランス・ドイツ・イギリス・スイス
パトリス・ルコント監督

正反対の個性を持ち、
それぞれなりの人生を過ごしてきた2人の男が、
「知り合って」しまったら?
天賦の人生ってやつについて考えずにいられない作品です。
軽妙洒脱でおなじみのルコント作品とはいえ、
辛気くさいものは辛気くさいっ。


山の焚火
1985年スイス フレディ・M・ミュラー監督
アルプスの山中で暮らす家族の物語。
エピソードにかなり強烈なものが含まれているので、
マニア受けする要素もあるにはあるのですが…
(私は大昔、これの予告編を劇場で見たとき、
余りにも音声が少ないシーンだったので、
スピーカーが壊れているのかと思いました)

レディバード・レディバード
1994年イギリス ケン・ローチ監督

「辛気くさい映画界の帝王」と敢えて言いたい
ケン・ローチ作品からは、代表してこちらを。
養育能力の欠如から、
実子を次々に行政によって取り上げられてしまう
母親の悲劇、という
実際にイギリスであった事件を、
同名のマザーグースの詩になぞらえて描いた作品。
よくできていますが、
単純に「感動した」という言葉を使うのに
非常に葛藤を覚える作品でした。


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