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2003年01月27日(月) |
聖なる嘘つき・その名はジェイコブ |
1月27日は、ナチス犠牲者記念日です(1996年制定)。 1945年のこの日、アウシュビッツ強制収容所が ソ連軍によって解放されたことに因むとか。
聖なる嘘つき・その名はジェイコブ Jakob the Liar 1999年アメリカ/フランス ピーター・カソビッツ監督
Jacob's Ladder(ジェイコブのはしご)という言葉があります。 Jacobジェイコブ(ヤコブ)は、 イエス・キリストの弟の名前ということもあり、 数年前にはアメリカの男の子の名前として No.1になったこともあるほどメジャーなものだとか。 「ジェイコブのはしご」とは、聖書に出てくる故事に因む、 雲間から筋状にさす光のことですが、 どちらかというと、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの曲名や ティム・ロビンスの映画タイトルでおなじみでしょうか。 この映画の原題、あのもじりかなと思っていたら、 冷静に見たら、名前の綴りがちょこっと違ったようで。
前置きが長くなりましたが、 この映画には、あんまり宗教めいたところはありません。 死と隣り合わせのユダヤ人のゲットーが舞台です。 宗教以上に人々に希望を与えたものが描かれていました。
ユダヤ人ゲットーに住む ジェイコブ(ロビン・ウィリアムズ)は、 ある日、風に舞う新聞紙を追いかけていて、 夜間外出禁止の時間を過ぎて外出してしまい、 厳重注意されます(実際にはまだセーフの時間だったけど)。 そこで、指示に従って係官のもとに赴いたとき、 部屋に貼られた地図や、漏れ聞こえたラジオニュースから、 ソ連軍がかなり近くまで来ている(といいなあ)という憶測をし、 うっかり友人にそれを漏らしてしまいます。 そのせいで、ラジオを持っていると勘違いされたジェイコブは、 情報に飢えていたゲットーじゅうの人間から 今日は何かないかとせっつかれるようになるのでした。
ラジオのように、外の情勢がわかってしまうツールは、 ゲットーでは所持を禁止されています。 持っていることがわかれば射殺ものでしょう。 しかし、ある日老い先短い老人に 「ラジオなんか持っていない」ときっぱり言ったばかりに、 ショックで亡くなってしまうというショッキングな出来事があり、 ジェイコブは、真実が絶望を呼ぶことがあると知って、 さもラジオを持っているかのような「演技」を続け、 希望的観測による戦況や、 聞いてもいないジャズの名演奏について 滔々と語るようになります。 いかにも口八丁で芸達者なR.ウィリアムズらしい演技で、 人々に希望を与え続けるそのホラ話の数々は、 彼自身にとっては悲劇へと通じていくのでした……
『ライフ・イズ・ビューティフル』に似た部分の多い映画なので、 (御丁寧に、人格者の医師や、 小さな少女を匿うエピソードまで出てきます) 好き嫌いの分かれる話ではないかと思います。 が、気高い意志でもってつくられたコメディーという感じがして、 私は好印象を持ちました。
冒頭で、昔からよく言われていたユダヤのジョークが登場します。 ヒトラーは占いフリークとしても知られていますが、 ある日、自分が死ぬのはいつか占い師にと尋ねました。 占い師は「ユダヤの祝日だ」と答えます。 何月何日の祝日かと問い返すヒトラーに、 「あなたがいつ亡くなっても、その日はユダヤの祝日になるでしょう」 と答えましたとさ……というアレです。 苦難の歴史の中で「冗談でも言わなきゃやってられない」的に生きてきたであろう、 ユダヤ人たちのこの手のジョークに、惹かれる方も多いのでは?
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