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さよなら子供たち Au Revoir, Les Enfants 1987年フランス/ドイツ ルイ・マル監督 気がつけば、3日連続フランス映画の御紹介です。
1944年、フランスの片田舎にある カトリック系の学校を舞台にした物語ですが、 ドイツ軍占領下という背景を考えると、 当然、ナチスドイツの影を見ずにいられませんが、 そうした一連の「ナチス物」の中でも、 人間の醜悪さを余り感じさせない割には 迫り来るようなリアルな哀しさにあふれた佳作でした。
裕福な家の息子ジュリアン(ガスパール・マネッス)は、 兄フランソワとともに、 田舎にあるカトリック系の全寮制学校に疎開させられますが、 そこで、ボネ(ラファエル・フェジト)という、 秀才でピアノのうまい少年に興味を惹かれます。 やがて、ひょんなことから ジュリアンはボネがユダヤ人であることを知りますが、 学校長は、それを承知の上で 彼を匿う格好で入学させていたのでした。 ジュリアンとボネは、 控えめながら友情を育んでいきます。
しかし、 事件といえば、生徒が学外活動で迷子になっただの、 小間使いの少年が感心しない方法で金稼ぎをしただの、 そんなことぐらいしかなかった平和な学校生活にも、 確実に残酷な戦禍のにおいがし始めるのでした……
ルイ・マル監督は、かつて『ルシアンの青春』で ナチスの悲劇にまつわる映画を既に監督済みですが、 あの、ナチスに傾倒しながら ユダヤ人女性に恋をする少年のジレンマは、 見ていて非常に辛いものがありました。
この『さよなら…』は、 多分に自伝的要素も含まれているようです。 それでいて、感情や私情だけに走っていない、 何ともいえない清涼感がありました。 淡々とした表現手法をとることで モチーフの残酷さを際立たせる方法はよくありますが、 何だかその冷静さが鼻持ちならなくなったり、 何が言いたいかがよくわからなかったりするのも この手のやり方の落とし穴です。 その点、この映画は全くお見事でした。
学外活動で迷子になったジュリアンたちを 学校まで送り届けてくれたのは 他ならぬ(気のいい)ドイツ兵たちだったり、 食事の席でユダヤ人に好意的な発言をしたジュリアンの母に、 (デヴィ・スカルノ似のケバい姥桜だったりしますが、いい人です) ボネが安堵の眼差しを向けたり、 ほっとさせるような描写も随所にあり、 すごくきれいで価値のあるものを知ったときの 満足感を得られる作品でした。
下世話な「おすすめ情報」を付け加えれば、 ジュリアンやボネはもちろん、 若木のような美少年たちの姿がたくさん見られる 目の保養映画でもあります。 特に、くりくりの黒髪でのっぽのやせっぽち なんてタイプがお好きな方には、たまらないでしょう。
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