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(アカデミー賞こじつけ企画、進行中) 「きょうのオスカー候補」は、 『セクシー・ビースト』(日本未公開)で助演男優部門にノミネートの、 ベン・キングスレーです。 たとえごらんになったことがなかったとしても、 『ガンジー』の、と言えば、イメージがわくのでは? (↑この作品では、主演男優賞に輝きました) かっこいいスキンヘッドのおじさまですが、 次の作品にも出演していました。 一覧表を見て、意外なことに未取り扱いだったことに気づいたので。
モーリス Maurice 1987年イギリス ジェームズ・アイボリー監督
ある意味「名コンビ」という表現もできそうな、 「フォースター原作、アイボリー監督」という組み合わせの1本。 1987年度、衣装デザイン賞部門でノミネートされました。 でも、もちろんコスプレだけの映画ではありません。
20世紀初頭、ケンブリッジ大学で出会った モーリス(ジェームズ・ウィルビー)と クライヴ(ヒュー・グラント)は、お互いに恋愛感情を抱きつつ、 人目をしのんで愛し合うようになりますが、 クライヴの気持ちを特に尊重し、「清い関係」を保ちました。 最初に胸中を告白したのはクライヴの方でしたが、 彼は、世間体もあってごく普通に女性と結婚し、 (この辺の設定は、原作とは大分違うようですが) モーリスだけが自分の気持ちを偽れず、 取り残されたような格好になります。
そんなモーリスは、ハンサムだけれど下賤の者と見下していた 森番のアレク(ルパート・グレイブス)の夜這いに遭い、 彼をばかにしつつも、肉欲に溺れていくのですが…
まだ男色が具体的な「犯罪」だった頃のイギリスが舞台なので、 自分の性向に悩む青年の話にはなっていますが、 障壁をいろいろなものに置き換えたら、非常にコンテンポラリーな 恋して悩む人々の物語として見られると思います。 私は、「俺のことを恥ずかしいと思っているんだろう」と モーリスに食ってかかるアレクを、いじらしく思って見ました。 打算的に見えるクライヴもまた、一生十字架を背負うような気持ちで 生きていくのだろう…という描写が切ないし、 この映画で注目すべきは、モーリス1人では決してないと思います。
ベン・キングスレーは、モーリスのカウンセラーという役どころでした。 「この国は昔から、人間らしい感情を否定してきた」 というようなセリフが印象的です。 人に対して恋愛感情を抱くのも、その相手が同性だというのも、 人間の心のうちで湧き起こってしまうからには、 確かに「人間らしい」感情ですね。
どうしても、登場人物が男色家という映画は ファン層に偏りがありますが、 秀作揃いなので、本当に惜しいと思います。 例えば『トーチソング・トリロジー』などもすてきな映画でしたし、 (いつか必ず取り上げたいと…と思っていたら、 一昨日は出演者マシュー・ブロデリックの誕生日でした…) 先日御紹介させていただいた『ブロークン・ハーツ・クラブ』は、 そうした過去のそういう映画を批判する描写はあったものの、 人間群像劇として、抜群に魅力的でした。
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