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ハリーとトントHarry and Tonto 1974年アメリカ ポール・マザースキー監督
近作『キャッツ&ドッグズ』でも、猫はわるもの… 「派」とまではいかないものの、猫好きとしては寂しい限りですが、 この映画には、トントという名のイカした猫が登場しました。
なお、“トント”という名は、 往年の西部劇テレビシリーズ『ローン・レンジャー』に登場する ローン・レンジャーの忠実なるしもべであるインディアンの名からとったとか。 この番組をリアルタイムで見たことのない私やあなたも、 「インディアン、ウソツカナイ」の名台詞や、 「ハイヨー、シルバー!」の掛け声には、ぴんと来るものがある…はず。 映画の中のハリーじいさんは、 自分をローン・レンジャーになぞらえていたわけではありませんが、 内心、ちょっとはそんなことも考えていたかもしれませんね。
ニューヨークに住むハリー老人(アート・カーニー)は、 愛猫トントを犬のようにリードをつけて散歩させるような、 ちょっと頑固で変わった老人です。 「最近の車の名前には情緒がない!」と、瑣末(彼にとっては重要)なことで、 ブツブツと独り言を言ったするような、まあそんな人。
ハリーは古いアパートの取り壊しを機に、トントを従えて、 散り散りばらばらになった子供たちを訪ねて回ることになります。 バス旅行の予定が、トントがバスを嫌がったため、中古車を買ったり、 家出少女(メラニー・メイロン)と出会ったりの珍道中でした。 訪ねていった子供たちは、皆(いろいろな意味で)困ったちゃんばかりで、 ハリーの老体を労り、一緒に暮らそう…ということにはなりません。
ほかの映画の名前をサンプル的に出せば、 ジェゼッペ・トルナトーレの『みんな元気』とか、 デヴィッド・リンチの『ストレイト・ストーリー』なんかを ほうふつとさせる(ある種の影響も与えている?)のですが、 独断丸出しで言って、この『ハリー…』が最もとっつきやすく、 また味わい深い映画だと思いますので、強力にお勧めします。
この映画を見たのは、12年前、教育テレビ「世界名画劇場」枠でした。 当時、再生しかできないビデオデッキしか持っておらず、 (機能としてできないのではなく、技術としてできなかったのですが) 近くのレンタル店でも見つからない作品だったということで、 トイレに行くのも忘れ、見入った覚えがあります。 怒濤のような感激…ではなくて、 じわっと体を浸していたい、しんみりした感動が残りました。 辛うじて秋の夜長と言えるうちに、しみじみごらんになっては?
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