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2001年09月19日(水) 華氏451

9月19日は、
評論家の呉智英(くれ・ともふさ/またはごちえい)さんの
誕生日だそうです(1946年)。
といっても、この方は、
誕生日(→占星術)や血液型で人間を分類するやり方に懐疑的で、
聞かれるたびに違う答えを言うという話でもありますから、
この誕生日が正しいかどうかは存じません。
ただ、「誕生日と言われている日の1つ」であることには
間違いないでしょう。

私は呉氏の著書が好きで、
文庫になっているものばかりですが、結構読みました。
各章のタイトルなどでジョージ・オーウェルを意識したらしい
『バカにつける薬』は、なかなかよく売れたようですが、
封建主義思想とか、教養や学歴についての考え方に、
共感というよりは「いろんな人がいるもんだなあ」と
思いながら読むのが、変に楽しいのです。
(かといって、もちろん全く共感できないわけではありません)

そこで、酒もたばこもやらず、
ひたすら本を読むのだ〜と若いうちに決意した呉氏に敬意を表し、
氏も感動なさったという、読書にまつわる映画を。

華氏451Fahrenheit 451
1966年イギリス・フランス
フランソワ・トリュフォー監督


原作は、『たんぽぽのお酒』『火星年代記』などでもおなじみの
SF作家レイ・ブラッドベリの手になるものです。

読書は、「危険分子を生む悪魔の所業」であるという発想によって
禁止され、“消防士”が焚書に精を出すという、
うそ寒い近未来を描いた作品でした。
仮想近未来SF数あれど、「こうなってほしくない状況」の
上位(筆頭?)に挙げられるでしょう。
華氏451度というのは、本(紙)が燃える温度のことです。

愛書家たちと“消防隊”との攻防、お互いのその狂信的な姿、
本当に正しいことは何なのか、考えれば考えるほど
わからなくなるような禍々しい空気に包まれ、進んでいくのですが、
幕切れのさわやかさにはほっとします。
読書好きならば、きっとわくわくさえするシーンです。

それにしても、近未来という設定でも、
女優のファッションやメイクが60年代風なのは、ちょっと笑えます。
例えば、1968年製作の『2001年宇宙の旅』も、
その人が初めて見た時代によって、大分印象が違うのでしょうね。
映画タイムトリップの楽しみの1つです。


ユリノキマリ |MAILHomePage