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2001年08月12日(日) 愛と宿命の泉

愛と宿命の泉
フロレット家のジャン/泉のマノン
Jean De Florette / Manon Des Sources

1986年フランス クロード・ベリ監督


この映画については、
つい最近も少しだけ触れましたが、
もともとは2本の映画だったものを、
日本では前編・後編に分かれた1本の映画として上映されました。
そして、やはりこの見方が一番いいと思います。
前編のラストだけで「終わりっ」とやられても、ひたすら後味が悪く、
後編を前編の知識なしに見ると、
何が何やら…だからです。

原作は、マルセル・パニョル。
同じく映画化された『マルセルの夏』『マルセルのお城』なども
知られる、フランスの国民的作家ですね。

1920年、フランス・プロヴァンス地方の小さな村に、
亡き母土地を相続した“フロレット家のジャン”がやってきます。
元女優だという美しい妻と、
妻そっくりの愛くるしい娘マノンを伴って。
すぐそばに住む土地の権力者パペと、その甥ウゴランは、
「ある含みも持って」都会育ちのジャンに
野良仕事は無理だとせせら笑いながら、
ジャンとその家族に親切にし、信頼をかち得ます。

が、この出会いこそが、すべての悲劇の始まりでした。

どう書いてもネタバレになりそうで、
ちょっと及び腰になります。

そして後編“泉のマノン”では、
美しく成長したマノンが登場し、
それまで結婚に無関心で、
やもめを通してきたウゴランの心をとらえます。
マノンは全く相手にしないのですが、
ウゴランが追い回す姿が哀れでおかしく、
びっくりするほどコミカルなシーンが多いのに驚かされます。
が、終盤では、悲劇の全容が明らかになり、
どどーんと突き落とされるような感じ。
そして、ラストシーンの余りにもしんみりした味わいには、
ただ一言、「素直な映画だなあ」と思わずにいられません。

といった筋の中で、水をめぐる住民の争いや、
パペやウゴランが犯した許しがたい罪が織り込まれます。
この映画の中のように、
農耕を生業としている人たちにはなおのことでしょうが、
私たちのふだんの生活に置き換えても、
やはり訴求力があると思います。

パペを演じたのは、今は亡きイブ・モンタン。
豪快に見えて抜け目ない、そして依怙地な田舎のじーさんを、
非常に憎ったらしく好演していました。
ウゴランは、『八日目』でおなじみの
ダニエル・オートゥイユでした。
小さなマノンに「カエルみたいに醜い」などと言われるとおり、
垢抜けない様子で、おせじにもハンサムとはいえない役ですが、
“泉のマノン”での恋する男ぶりは、そう悪くないと思いました。

“フロレット家のジャン”ことジャンを演じたのは、
フランスというより世界的名優
ジェラール・ドパルデュー。
頼りがいのあるよきパパを、全身で演じていました。
そして、成長したマノンを演じたのが、
あの、誰が見てもとりあえず「美人」と言いそうな、
びっくりするほど美しい目元をした
エマニュエル・ベアールでした。
ウゴランの思いは全く届かず、
マノンは平凡な男性と結婚しますが、
マノンではなくエマほどの女性が!と考えると、
もったいなくなっちゃうほどしょぼい感じの男性でした。
もはやどんな役者だったか検索する気すら起きません。

両方合わせ4時間近くありますが、
お盆休みを利用してご覧になるのも一興かと思います。


ユリノキマリ |MAILHomePage