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2001年07月06日(金) 恋におちたシェイクスピア

1951年7月6日ジェフリー・ラッシュが生まれました。
そこで、彼が助演男優賞にノミネートされ、
受賞は逸したものの、
映画自体は作品賞・主演&助演女優賞を受賞した
次の作品を御紹介します。

恋におちたシェイクスピア
SHAKESPEARE IN LOVE

1998年 ジョン・マデン監督


若き日のウィリアム・シェイクスピアが、
どうにもスランプに陥ってしまい、いいホンが書けない……
するってえと、彼のホン頼みの興行主ラズロは、
資金繰りがうまくいかず、借金取りに追い回される……
その興行主を演じたのが、ラッシュでした。
例えば、比較的公開が近かった『レ・ミゼラブル』の直後に見たら、
混乱してしまうような別人キャラクターでした。
騒がしくて小ずるそうな、でも憎めない、という。
そして、そのずっこけぐあいが、
この映画にはまたぴったりなのです。

一応、古典悲劇の傑作「ロミオ&ジュリエット」の
誕生秘話という仕立ての、このフィクションで、
ウィル・シェイクスピア役はジョゼフ・ファインズ。
既に名をなしていたレイフ・ファインズの弟で、
(↑『シンドラーのリスト』『クイズ・ショウ』など)
レイフによると、「ファインズ家のきょうだいは、
下にいくほど顔がいい」のだそうですが、
実際はレイフの方が無難な二枚目だと思います。

若きウィルは芸術家らしく、
インスピレーションが得られないことに苦悩しているのかと思いきや、
結構俗なことを、当時の精神分析医みたいな人に
打ち明けているのが笑えました。
(この映画自体が、実在したとされる人物も出てくるものの、
大いなるフィクションですので、
時代考証などは、あんまり考えないで見た方がいいようです)

シェイクスピアが活動していた時代ですから
いわゆるエリザベス朝ですが、
エリザベス女王役が、助演女優賞を受賞したジュディ・デンチでした。
同年のアカデミー賞合戦でともに話題になった
『エリザベス』を併せて見ると、興味深いかと思います。

「書けない病」のウィルにひらめきを与えたのは、
芝居に出たい一心で男装までした(女性は舞台に立てなかったのですね…)
貴族の姫君ヴァイオラ(グウィネス・パルトロウ)との恋でした。
ヴァイオラは、以前からウィルの評判を知っており、
密かに思いを寄せていたのですが、
ウィルの方は、まさに一目惚れでした。
実は、間もなく金持ちの男に嫁ぎ、
新大陸へと行くことになっているヴァイオラでしたが、
そんな彼女の逢瀬に協力的な侍女を演じていた
イメルダ・スタントンにも御注目いただきたいと思います。

私はこの映画を人に勧めるときに、
必ず抱き合わせで『十二夜』(1996)も勧めるのですが、
イメルダ・スタントンは、
この映画でも貴族の令嬢の侍女を演じています。
2本を一遍に見ると、
必ずしも偶然だったとは思えないほどのはまり役です。
(一部で不評らしい)『恋に…』ラストを見れば、
なぜ『十二夜』なのか、どうしてスタントンなのか、
わかっていただけるんでは……と思います。
だから、『恋に…』未見の方は、『十二夜』を先に見た方が、
より理解がスムーズではないかと思います。
ただし、あのラストの処理が気に入るかどうかは、また別の話ですが。

スタントンだけではなく、この映画には味な脇役が多数登場します。
借金取りの1人で実は芝居好きという男の役を、
『フル・モンティ』『ラッシュアワー』のトム・ウィルキンソン、
ウィルの先輩格の作家役でルパート・エヴァレット、
グウィネスの婚約者がコリン・ファース、
男装したグウィネスに主役をとられてクサってしまうものの、
最後にはいい芝居にするため脇で頑張る“花形役者”が、
ベン・アフレックでした。

実は、この映画を初めて見た直後、
これは非常に傑作だと思ったのにもかかわらず、
何日かすると、
「運命の出会いだけに頼った恋愛って安っぽいなあ」と、
なぜか毒づきたい気分になってしまい、
そのように映画好きの知人に吹聴したりしました。
何と罪なことをしてしまったのでしょう。
それを言ったら、もっとひどい映画はたんまりありますわね。
この映画は、とにかく一見に値すると思います。


ユリノキマリ |MAILHomePage