Dailymovie
DiaryINDEXpastwill


2001年05月22日(火) ゆりかごを揺らす手

「家政婦は見た!」シリーズの市原悦子さんが、
新聞のインタビューに答えているのを読み、
笑ってしまったことがあります。
というのも、
「自分は本当は家事が苦手で、家政婦さんを雇いたいが、
本当に雇うとしたら、徹底的にリサーチするだろう」
などという趣旨のことをおっしゃっていたからです。
そりゃ……ねえ。
役柄とはいえ自分がすることを、他人にするなとは言えますまい。

『プリテンダー』というアメリカのドラマを御存じでしょうか。
ちょっと前、当地で日曜の夕方(後に深夜)に放映されていて、
私は毎週楽しみに見ていたのですが、
ジョージ・クルーニーの1.5倍くらいくどい顔の二枚目
“ジャロッド”が主人公で、
彼は極秘組織で幼いころから訓練を受け、どんな職業にも就けるほどの
知識と技術を体得するのですが、
あらゆる業界に顔を出し、その世界の悪を暴きながら、
まだ赤ん坊の時分に引き離された母親を探すというような筋立てでした。
医者になりすましたときのエピソードでは、
職務怠慢で患者を見殺しにした同僚に、
フグの毒を「死なない程度に」盛ったケーキを食べさせたり、
方法もなかなかユニークだったのですが、
このドラマ、「家政婦は見た!デラックス版」のノリがありましたね、
こうして振り返ると。
我らが市原悦子さんも、覗き見とお節介には困りものですが、
とりあえず、正義の味方ではありました。

市原さんもジャロッドも、第一印象は「感じのいい人」であり、
また、「悪にとっての脅威」であるだけで、
何の落ち度もない人にどうこうしようということはありません。
信頼をかち得ようとする人間は、第一印象は十分過ぎるほどよくて
当たり前かもしれませんが、
その本当の目的が那辺にあるか、考えてみれば恐ろしい話です。
(市原さんの場合は、たまたま覗き見て知ってしまうという状況ばかりですが)

今日取り上げさせていただく映画の
主人公ペイトン(レベッカ・ディモーネィ)も、
ちょっと見には、美しくて優しそうな女性でしかありませんでした。

ゆりかごを揺らす手
The Hand that Rocks the Cradle

1991年アメリカ カーティス・ハンソン監督


今、ここに書き出すまで忘れていましたが、
監督が、あの『L.A.コンフィデンシャル』と同でした。

この映画、サスペンス映画としての演出もさすがにうまいのですが、
まずはタイトルがいいと思います。
原題を日本語に直訳している作品って、この頃珍しいほどですが、
原題さえよければ、小細工なしで十分イケるという典型ですね。
(モトネタはマザーグースかな?)
センスのいい独自路線の邦題というのも結構難しいもので、
評判になったものほど内容とかけ離れている気がするのは
なぜでしょうか。
(答え・ぜぇんぶ、原題自体が悪いせいです)

かかりつけの産婦人科医の手つきに不審なものを感じ、
夫の後押しもあって、セクハラ容疑で医師を訴えて勝った
裕福な人妻を、アナベラ・シオラが演じていますが、
この人は、最初はどちらかというと「憎まれ役」かもしれません。
というのも、裁判で負けた医師は、それを苦に自殺を図るのですが、
この医師にも妊娠中の妻ペイトンがいました。
ペイトンは、夫の自殺にショックを受け流産してしまった上に、
自殺のために死亡保険金も支払われず、
何もかも失ってしまいました。

一方のアナベラ演じる人妻は、その後かわいい女の子を出産し、
持病の喘息を除けば何1つ不自由のない、
幸せだけ食べて生きているような生活をしています。
そんな中、娘のベビーシッターとして訪れたのがペイトンでした。
見るからに美しく優しげなペイトンに娘もすぐ懐き、
簡単に家族の信頼を得てしまいました……が?

ここまで書けば、
「この映画はサスペンス」だとジャンルを断定するのみで、
あとは見て堪能していただくしか思います。

それから、ペイトンの行動に一番最初に疑念を抱いたのが、
アナベラ・シオラ(役名が出てこない)の友人で、
不動産業に携わる女性でしたが、この細長い美女に御注目ください。
最近はオスカーノミニーの常連でもあり、
『ハンニバル』主演でも話題のジュリアン・ムーアでした。
彼女って、線は細いながら、一度見たら忘れない何かがありますね。
女優としては、かなりオイシイ個性ではないでしょうか。



ユリノキマリ |MAILHomePage