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2001年04月12日(木) レ・ミゼラブル

1979年4月12日、クレア・デインズが生まれました。
また、今日は、1983年にパン普及協会が制定した、
「パンの記念日」でもあるそうです。
1842年、伊豆韮山代官の江川太郎左衛門英龍が、
兵糧として乾パンをつくったことにちなんでいるそうですが、
クレア・デインズ……、パン……とくれば、
次の映画はいかがでしょうか。

レ・ミゼラブルLes Miserables
1998年イギリス=ドイツ=アメリカ合作
ピレ・アウグスト監督

ビクトル・ユゴー【レ・ミゼラブル(あゝ無情)】岩波文庫

『あゝ無情』という日本語タイトルでも知られる、
ビクトル・ユーゴーの文芸大作ですね。
何度か映画化されていますし、ミュージカルも有名。
が、私はこの1本しか見ておりません。
でも、比較する必要もないかと思いました。
日本でも人気のある役者が大挙して出てくるというのもありますが、
とにかく見やすく、それでいて手応えもあるのは確かです。

ジャン・ヴァルジャンは、
パン一切れを盗んだ罪で19年間投獄されました。
そのヴァルジャンを演じたのは、リーアム・ニースンですが、
どうしても私には最後の最後まで、
ジェラール・ドパルデューに思えました。
顔が似ているわけでもないのですが、
今にもフランス語話しそうだし。
(全編英語でした。戦時下のドイツを舞台にした
『スウィング・キッズ』とか、
東洋人だらけの『ラスト・エンペラー』
で英語をしゃべっていたときよりも、
個人的にはずっと違和感なかったです)

ヴァルジャンを執拗に追い詰めるジャベール警部は、
ジェフリー・ラッシュでした。
これがまた、ねちっこさがよく出ていて、
本当にはまっています。
子供のころ「まんが世界昔話」※で見た、
「あゝ無情」のジャベールのイメージ
そのままでした。
 ※)名古屋章と宮城まり子が吹き替えていた番組ですが、
   覚えている方いらっしゃいますか?

ヴァルジャンが縁あって引き取る娘コゼットが
年頃になってからを、クレア・デインズが演じていましたが、
そのコゼットの母親フォンティーヌを演じ、
かなり最初の方で姿を消してしまったのが、
あの泣く子も黙る美女ウーマ・サーマンです。
ひどくみすぼらしい女を熱演していました。
女優が醜い女役を演じるのは、
かなりチャレンジングなことなのでしょうが、
いやあ、この映画のサーマンは、本当に醜かったです。
↑もちろん私、褒めているつもりで言っております。

原作は非常に長いものですが、
(フランスでは短編は軽んじられる傾向にあるとか)
私は小学4年のとき、子供向きに翻案したものを読み、
それなりに感動して、感想文を書きました。
それを担任に褒められ、コンクールに出そうねと言われて
いい気になっていたのですが、
あろうことか、担任はその作文をなくしてしまいました。
実は、次の年も、担任こそ違ったけれど、
全く同じ目に遭いました。
さすがに6年生になったら、別な作品の感想を書きましたけど、
今思うと、何も読まずに感想文だけ書こうとした5年時は、
失くされたのは「天罰」だったのかもしれません。

その本で一番印象に残っているのは、
フォンティーヌが、コゼットの里親テナルディにだまされ、
髪の毛や前歯を売ってお金をつくるところでした。
映画的演出としては「体の売る」の意味が大分違っていたけれど、
どちらにしても、悲しい母親の姿に胸が詰まります。
私も母親のはしくれですが、
髪の毛なら、買ってくれる人がいれば(喜んで)売るけれど、
それ以外はちょっとなあ……。
強いて言えば、プライドを安く売って、
ほいほい仕事を引き受けちゃうことはよくありますけど。

映画のテーマは、偏に「愛」という感じでした。
ヴァルジャンとフォンティーヌの間には、
それ以外の言葉で表現できないようなつながりが、
束の間とはいえしっかりとあったし、
ヴァルジャンとコゼットは、出会った瞬間に親子でした。
ジャベールの、職務に忠実たれというパラノイア的こだわりも、
いわば「愛」だったでしょう。

それにしても、この手の文芸ものを見るたび思いますが、
名作と言われる文学って、大抵プロットは通俗的なものですね。
そうでないものは、ただ単に「難解」だし。
そう考えると、「通俗的」って決して悪いことじゃないなと思えます。
すごく乱暴に解釈すれば、受け手への思いやりってことで。
その表現に失敗すると、
いわゆる「ソープオペラ」「昼メロ」系になっちゃいますけどね。

絶対無理だと思いますが、
ケン・ローチ監督、ユアン・マッグレガー主演の
「デビッド・コパフィールド」なんて見たい気がします。


ユリノキマリ |MAILHomePage