5/24土曜日
居酒屋の二階
音響設備はない 「生音」だ
共演は「菓子屋」さん
僕らは出演者ならぬ 居酒屋の「客」となって
「お客さんが一人でも来たら始めよう」 そう決めて食べながら待つ
午後九時半を回っても 僕らの音が目当てのお客さんは一人も来ない(笑) 菓子屋さんは既に生ビールを5杯は空けた
「二人会だ・・・」
そう言うとギターを握って歌い始めた
3曲ごとで交代 僕が歌い始めると階段を上がる音がする
一階で飲んでいたライブとは知らないお客さんが マイクなしで充分な僕の大声に反応して 「何やってんの?」という顔で階段から覗き込む
それでも 二階で腰を据えて聞く人はいない 午後十時半を回っても僕らのお客さんは来ない
「もう来ない」
しびれを切らして 菓子屋さんはゲリラ作戦に出た
ギターを弾きながら一階へ降りていく 僕もアドリブを弾きながらついていく
酒の入っている一階のお客さんは この余興を歓迎してくれた 店主も厨房から笑って見ている
通りすがりの観光客が窓越しにカメラを構えた
菓子屋さんはそれを見逃さず ギターを弾いたまま表通りへ飛び出す
僕もアドリブを弾きながら そのファインダーに二人で収まった 笑い声と歌声が通りにこだました
こういう事をごく自然に 当り前に出来る菓子屋さんに 僕はたまらなく魅力を感じている
僕なら お客さんのいない舞台にクサって たぶんメシだけ食べて帰っているだろう(笑)
この人は決して いわゆるメジャーの日の目を見ない
いや そんな事がもう眼中にない
自分の出す音をよく知っていて 他人に無理強いしないこの人は 見事に僕とは対極にいる
音を出すためにこだわる事を 果たしてどこまで削いだなら 音は音でなくなるだろう?
こだわりを削いで得た「自由」 それをこの人は僕に教えてしまう 枷のぶら下がる僕の足どりは この人の前ではバカバカしいだけだ
「さぁ帰るぜ『弟』よ!」
しこたま酔った菓子屋さんは 8年ほどの付合いの中で 初めて僕を「弟」と呼んだ
「へぃ!アニキ」
これで充分な夜だよな
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