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2013年11月10日(日) |
「BEYOND : Two Souls」 |
映画ではなくゲームです。ゲームですが今年の東京国際映画祭にゲーム史上初出品ということで(結局上映は中止されたみたいだけどね…)、せっかくプレイしたことですし感想書いとく。
この作品は東京の前にNYのトライベッカ映画祭にも出品されています。主演エレン・ペイジ、助演ウィレム・デフォー、監督(脚本)はゲームの人ですが音楽にはハンス・ジマーを迎えていて、ものすごく映画的なゲームなんです。おもに映像が。それはもう圧倒的なグラフィック、ハードはPS3ですがおそらく現行機ではこれが限界じゃないかしら…というくらいほんとにすごい。肌はアップになると毛穴や血管の透けて見える感じまで再現され、しかも役者の演技をそのまま取り込んでるので実写に引けを取らないリアリティ。ペイジちゃんデフォーさん以外のサブキャラも実際に俳優さんが演技していて、撮影のときはみんな顔にいっぱいセンサーみたいのつけてそれで微細な筋肉の動きを全部読み取ってるわけです。だから表情が特に実写レベル。人物の動きを取り込むだけのモーションキャプチャならもう珍しくもないけど、それをさらに精緻化したこの技術には純粋に驚いた。ほんと映画観てるのと大差ないんだもん。肌もそうだけど涙の描写なんかもあまりに自然で見入ってしまう。
主人公はペイジちゃん演じるジョディという女性で、彼女は生まれつき“エイデン”という名の霊体と共存しています。彼が何なのかどうしてそうなったのかはジョディ自身にもわからない。でもエイデンの存在によって子供の頃から霊が見えたり超能力めいたチカラが使えたりするので育ての親からは気味悪がられて軍に預けられ(ここで彼女を担当する博士がデフォーさん)成長後はCIAに入れられます。プレイヤーはそんな彼女の波乱の人生をともに体験していくことになる。 操作できるのはジョディと霊体であるエイデン。適宜切り替えて使えます。で、プレイヤーの行動や選択肢の選び方によってある程度異なるジョディ像が生まれることになる。たとえば子供時代いじめを受けるシーンでエイデンを使って報復するか、黙ってやりすごすか。大人になって恋人を招待した夜料理は何を作るか、何を着るか、そしてエイデンは暴れて二人の邪魔をするのか、それとも見守るのか。そういうことがプレイヤーにゆだねられていて好きなように振る舞える、さらにとった行動によって先々の展開も変わってくる。…といっても本筋ストーリーは一本道なので実はどんな突飛なことしようと結末に致命的な影響はないのですが、とにかくこうしてプレイヤーがインタラクティブに関われる、登場人物を動かすことでまるで映画の中に入り込んだような没入感が味わえる…というところがこの作品のウリ。確かにただ映画を観ているのとは違う緊張感がありました(ゲームだから当たり前だろ!というつっこみはひとまず置いといて)。紛争地域でのミッションはハラハラするし、単なる会話でもどう答えを返そうか逡巡してしまう場面が多数。逆にハリウッド映画ならここはやっぱりキスシーンでしょ!と迷わず行動できるところもあったり(笑)。しかし出演者は選択肢によって発生・分岐するあらゆるパターンの演技を実際にしているわけだから相当大変だったと思います。しかもプレイヤーがパターン変えて複数回プレイしない限りその大半が再生されることのないまま埋もれてしまうという…。
そんな感じで各エピソードはたいへん映画的で素晴らしいのですが残念な点が一つあって、それは構成。このゲーム時系列がバラバラに配置されてるんですよ。ほんとブツ切れ。繋ぎも何もない。CIA訓練の後に少女時代のエピソード、その後はいきなり砂漠を放浪してたりして面食らう。一応理由はあるんだけど(最後にわかる)、やっぱりこれは味気ないと思います。映画を目指したいなら全体の流れ、見せ方、盛り上がり、そういうところにもう少し気を配ってほしかった。あとストーリーがわりとありきたりだったところもマイナスポイントかな。ジャンル的にはオカルト入ったSFというところですが、後半でいきなり話が大きくなっててびっくり、みたいな(笑)。エンディングはマルチなのでお好きなパターンを選べますよ。 でも迫力とリアリティがあって面白かったです。ゲームと映画が融合した新しい映像体験で、どちらも好きな私は楽しめました。そしてペイジちゃんもデフォーさんも本当に熱演でしたよお疲れさま!
もうひとつ撮影風景がわかるプロモ映像
ゲームとしての感想は→こっちに書いたのでご興味あればどうぞー
****** BEYOND : Two Souls <Game>
プラットフォーム:PlayStation3 2013年10月17日発売 監督・脚本:デヴィッド・ケイジ 開発:Quantic Dream 出演:エレン・ペイジ、ウィレム・デフォー、 カディーム・ハーディソン、エリック・ウィンター
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