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シェイクスピアの「コリオレイナス」現代版。レイフ・ファインズ初監督作ですよ!監督レイフ主演もレイフとレイフ三昧で嬉しい反面私シェイクスピアとか全然わかんないんでちょっと身構えて観に行ったのですが、舞台が完全に現代に置き換えられていたので思ってたほどとっつきにくくはなかったです。ただ見た目は現代ドラマでも設定や役名は原作のまま、さらに登場人物が戯曲さながらの大仰なセリフを(舞台のような発声で)喋るという、映画としてはかなり不思議なテイスト。映像は映画なのに雰囲気は舞台みたいな、なかなかの異色作に仕上がってたと思います。
舞台は架空の現代都市「ローマ」。常に最前線で危険に身をさらし国を守り続けてきたマーシアス将軍(レイフ)はその功績を認められて“コリオレイナス”の称号を得るが、その後反発する政治家たちの策略により市民の反感を買うよう仕向けられ、国を追われてしまう。怒りと絶望の中で祖国への復讐を誓ったコリオレイナスは捨て身で宿敵オーフィディアス(ジェラルド・バトラー)のもとを訪れ、今度は彼の軍を率いて祖国ローマへと進軍を開始する…という話。 愚直なまでに高潔な男の悲劇でした。コリオレイナスは己の信念に忠実すぎて何事にも妥協ができない。極端な言動は独裁と受け取られ、政治家の企みにかかれば簡単に悪者のレッテルを貼られてしまう。そんなコリオレイナスが終盤母親を前に初めて妥協を見せるのですが、しかし皮肉にもそれが彼自身の命を奪うきっかけとなるのです。悲劇だ…。 そんな感じでコリオレイナスの不器用な堅物っぷりはよく伝わってきたんだけど、ライバル設定大好物な私としてはできれば宿敵オーフィディアスとの関係をもう少し掘り下げてほしかった!互いに確執というか執着というか愛憎入り交じる複雑な感情がありそうなのに、二人の因縁については「長年の宿敵である」って言葉で説明されるだけなのですごくもったいなかったです。だって序盤の格闘シーンとかもう武器も持たない文字通りの取っ組み合いで、→ここでも触れられてるけどエロティックですらあるんですよ。それからラストも良かったなー。抱擁しながら刺し殺すなんて、愛憎が行き着く究極の終着点ではなかろうか。もえた。
あと、映像が予想外にワイルドだった。特に前半は手持ちカメラっぽいブレブレ感で酔いやすい人注意!なレベル。市街戦シーンの息を詰めて見守りたくなる緊迫感もすごかったー。と思ったら撮影は「ハート・ロッカー」のカメラマンの人なんだそうです。なるほど納得。市民デモも迫力あったし他にド派手な爆発があったり、こういういかにも映画的なバイオレンスアクションといかにも舞台的な中身のギャップが面白い。独特の異色テイストを醸し出していると思います。またこうした映像は私が漠然と思い描いていた「レイフ・ファインズが撮る映画」のイメージからかけ離れていて、良い意味で意外でもありました。 そしてレイフ自身もワイルドだった…!最初から最後までいかつい軍服姿だし、鬼の形相ばかりで笑顔の欠片もなく(それは役柄上仕方がないが)、格闘シーンとかスキンヘッドで血まみれでほとんどホラーの域です(笑)。なんかもう今回はいろんな意味でレイフの益荒男な一面を見た気がするよ! それでオーフィディアス役のジェラルド・バトラーも良かったけど、なんといってもヴァネッサ・レッドグレーブ(母親役)の存在感が半端ない。軍服姿がキリッと男装の麗人みたいで超かっこよかったです!
私が観に行った映画館は客層がかなり落ち着いたというか平均年齢高い感じ(自分も含めてな!)でしたが、その中に一人で来ている制服姿の男の子(たぶん高校生)を見かけてとても印象深かったです。しかもプログラムをめちゃくちゃ熱心に熟読していた。シェイクスピアの勉強とかしてるのかしらー。レイフのファンだったら嬉しい!
****** 英雄の証明 【CORIOLANUS】
2011年 イギリス / 日本公開 2012年 監督:レイフ・ファインズ 出演:レイフ・ファインズ、ジェラルド・バトラー、 ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ブライアン・コックス (劇場鑑賞)
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