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2012年02月05日(日) 「パーフェクト・センス」


これは不思議な映画だった。五感(嗅覚、味覚、聴覚、視覚)が一つずつ失われてゆくという原因不明の奇病が世界に蔓延する話なんだけど、人類が未知の病原菌と戦う感動作でもないし、病気によって混乱した世界を描く恐怖のパニック映画でもない。病に冒された一組のカップルを淡々と追う静かな作品です。
見終えて振り返ってみれば、そもそもこれが病気なのか何なのかもはっきりしない。主人公のスーザンは感染症の研究者という設定だけど最後まで何もわからず為す術もなく、結局自分も恋人のマイケルも発症してしまいます。この病気はまず強烈な悲しみに襲われた後嗅覚が失われ、しばらくすると今度は強烈な飢餓感に襲われた後に味覚を失い、さらに期間をおいて抑えがたい怒りに襲われた後聴覚を失う、そして最後に絶大な幸福感に包まれたまま視覚を失う(映画はここで終わる)……と、前触れとして感情が五感と結びついている点が特徴。あくまで感覚が失われるだけで生命の危険はなく、またこれら全てがいっぺんに発症するわけでもありません。一つ一つの感覚を失う間にはある程度の期間がある。この期間に人々がパニック→立ち直りを繰り返すところが印象的で、それがこの映画の本質でもあるのかなと思いました。たとえばマイケルはレストランのシェフなんだけど、彼の店では人々の嗅覚が失われた後匂いが感じられなくても大丈夫なよう味付けを濃いめにする。さらに味覚も失われた後は、見た目や音や食感で料理を楽しめるように工夫をする。味覚がなければレストランなど存在の意味がないかと思いきや実際は社交の場として客足が途絶えることはなく、人々は感覚を失った状態でそれなりに適応して生きていくのです。「それでも人生は続いてゆく」。
しかし聴覚まで失われる段階になるとさすがに世界は混乱する。映画もここからしばらく無音になり見ている我々も擬似的に聴覚を失うのですが、他人がこちらに向かって何か喋ってる様子なのに聞こえない、雑音すら聞こえてこないっていうのはものすごく怖いです。スクリーンの中では混乱に乗じて暴挙に走る人もいるし、冷静に理性的に行動する人もいる。どちらか一方に偏らず淡々と街の様子を映し出していたのが本当に印象的。
ラストで人々はついに視覚を奪われるのですが、この上ない幸福感に包まれ愛する人と手を取り合いながら何も見えなくなるというのは実に甘美な絶望だと思いました。いや絶望なのか希望があるのかわからない。何度か出てくる「それでも人生は続いてゆく」というフレーズが最後に再び繰り返されて、映画は静かに幕を閉じます。

感染症学者のスーザンを演じるのはダニエル・クレイグ最初の007でボンドガールを務めたエヴァ・グリーン、そして恋人のマイケル役はユアン・マクレガーです。ユアンはちょっと前に観た「ゴーストライター」も良かったしその前に観た「フィリップ、きみを愛してる!」もすんごい良かったし、私の中で最近また株が上がってる(笑)。昨日から始まった「人生はビギナーズ」も観に行く予定です!



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パーフェクト・センス
【PERFECT SENSE】

2011年 イギリス / 日本公開 2012年
監督:デヴィッド・マッケンジー
出演:ユアン・マクレガー、エヴァ・グリーン
(劇場鑑賞)


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