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2007年08月08日(水) 「ファウンテン 永遠につづく愛」

「永遠につづく愛」と副題がついていますがいわゆる一般的なラブストーリーとはちょっと雰囲気が違いました。幻想的というか哲学的というか…いや幻想と哲学って普通は同時に存在しませんけども(笑)、この映画の場合、描かれ方はファンタジー、そして根底に流れるテーマは生と死の哲学、という感じ。
主人公はトミーという医師で、脳腫瘍に冒され余命いくばくもない妻のイジーを救うため新薬の開発に心血を注いでいる。イジーは既に自分の運命を受け入れていて、中世の騎士が女王の命を受け不死の泉を探し出す『ファウンテン』という物語を執筆し、「最後の章はあなたが書いて本を完結させてほしい」とそれをトミーに託します。映画は現実世界とこのイジーが書いた中世の物語、それから未来(あるいは精神世界?)、これら3つの世界を行ったり来たりして相互に関わり合いながら進んでいく仕組み。
イジーは残る時間を少しでも長く夫と過ごしたいと思っているんだけど、トミーは彼女の死にゆく運命をどうしても受け入れることができない。とにかくイジーの身体を治したい一心で研究に没頭してしまうのです。二人とも本当に、心から愛し合ってる夫婦なのに、愛し合ってるが故に死に対する解釈に齟齬がある。イジーが『ファウンテン』を書いたのはそんなトミーに自分の死を理解してもらうためで、逆に言うとこの映画はトミーが3つの世界を行ったり来たりしながらイジーの死を受け入れて永遠の愛を会得する物語、ということができます。

ただこの3つの世界へのシフトがねー、わかりにくいんだ(笑)。特に説明もないままころころ切り替わるし同じシーンを何度も繰り返すし、流れについていくのに結構集中力が必要。あと全体のバランス的に、一番幻想的な未来(精神世界?)の比重が重すぎるというか、そこが要なのはわかるんだけど他の2つの世界に比べてかなり激しく異世界すぎます(笑)。唐突で面食らっちゃうのよ…映像は綺麗なんだけど。
現実世界でなくした指輪が中世の物語で出てきたり、指に入れ墨があったり、それぞれの世界が繋がり合うさまはちょっと萩尾望都あたりのSF風でもありました。しかしもう少しわかりやすいとよかった…(しつこいな)

などと言いつつ内容的にはなかなか考えさせられるものがあり、中世の物語で不死の泉に辿り着いた騎士の最期が私は非常に印象深い。なんかこの場面見てる時、「もののけ姫」でシシ神が出てきたシーンを突然思い出したのね。シシ神が足で触れた地面にはものすごい勢いで花が咲き、そして即座に枯れ果てる。生命は皆、生まれて、死んで、また別の新たな生命が生まれる。生と死のサイクル。頭では理解していても正面から向き合ってそれを受け入れるのはやはり難しい。思えば「もののけ姫」におけるシシ神も、生死を司る神だったですね。

主演のヒュー・ジャックマン(※左利き)は3つの世界の3つの役柄を演じていて、つまり三種類のヒュー・ジャックマンが楽しめるのでヒュー・ジャックマン好きにはオススメでございます。スキンヘッドの彼なんて初めて見たよ(笑)。レイチェル・ワイズも同様に、現実世界のイジーと中世お姫様の二役をこなしてる。二人の演技力と存在感はたいへん素晴らしかったです。



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ファウンテン 永遠につづく愛
【THE FOUNTAIN】

2006年 アメリカ / 日本公開 2007年
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ヒュー・ジャックマン、レイチェル・ワイズ
(劇場鑑賞)





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