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2004年03月08日(月) 「嗤う伊右衛門」

これまだ感想書いてなかったんだよなあ。違うところで違う語り方をしてしまったのですっかり書いた気でいたよ。観たのずいぶん前です。っていうかそろそろ公開終わってますか?最近はそんなのばっかりで申し訳ない。


原作は、今をときめく直木賞作家京極先生の四谷怪談新解釈でございます。全体的に原作に忠実だったので原作を知ってる人ほど満足できるのではないかと。京極流の台詞回しなんかも雰囲気的に上手く生かされてたし。ただ印象としては若干甘めかなー。伊右衛門と岩の恋愛感情、二人が愛し合っているという様子がはっきりと描かれている。このあたり、原作では割と曖昧なんですよ。ほとんど意地の張り合いにしか見えない、外国人だと理解できないんじゃないかという(笑)日本人特有の心の綾がベースになっていて、そこが絶妙なのね。もちろん映画でもその心の綾エッセンスはきちんと表現されておりますので、まあ私個人的にはおおむね満足であったわけですが。

しかし一方でこの映画、原作読んでない人には不評かもしれません。誰がどういう思惑で何をした結果ああいうことになったのか、多分わかりにくい。監督は原作に線を引きながら何度も何度も読み込んで構想を練り上げたそうで、こういうのって誰でも経験あると思うんだけど、作品世界にあまりに没頭し長い間そればかり考えていると本来説明が必要な部分も次第に当たり前のこととして扱うようになってしまったりするじゃないですか。ちょっとそういう感じを受けたなあ。例えば喜兵衛が最期に「泥が、泥が…」と呟く、あれなんか完全に原作読んでないと意味不明でしょ。それから又市と針売りお槇のエピソードはさっくり削ってしまっても良かったと思います。伊右衛門と岩の物語には直接関係ないんだし、二人の永遠の愛をテーマに描くスタンスでいくなら必要なかったのでは。

あーなんだか原作との比較感想ばかりですみません。私は舞台のことを全然知らないので蜷川監督的にどうだったかという語り方ができないのですが、時代劇なのに全然わざとらしい時代劇ではなく、どこか現代劇っぽいムードなところは良かったと思います。直助役池内君のキレっぷりとか、江戸時代の若者というより現代のチンピラって感じなんだけど(笑)、そういうところがかえって良い。刀でズバッと人を斬るたびに、ジャーーーン!チャララチャララチャラララララ〜♪とかパイプオルガンの音色が流れ始めるセンスも、「キル・ビル」ばりに噴水のごとく吹き上がる血しぶきも、個人的には好きです。欲を言うともっとグロくても良かったかな。伊右衛門が帰った後喜兵衛が自宅でお梅をいたぶるシーンなんか原作では京極節バリバリのそれは見事な卑劣っぷりなのでぜひ再現してほしかった!って言ってる私が一番卑劣ですか。あらごめんあそばせ。いやでも、これ本当に禁忌にまみれた救いのない話なんですよ。

喜兵衛といえば、椎名桔平みたいな線の細い人が喜兵衛ってどうよ?とか観る前には思ってましたが、これがなかなか悪くなかったですね! あとは又市役の香川照之が良かったです。小雪ちゃんは綺麗だった。唐沢寿明も良かったですよ。だって好きだから。


ところで考えてみたらこの作品、2004年初の邦画でしたよ。フランス映画に引き続き今年は苦手な邦画も順調なスタートだな。ちなみに次作邦画は「クイール」になる予定です。絶対泣いちゃうから一人で観に行こう(笑)。椎名桔平と香川照之はこっちにも出てるらしいですね。



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嗤う伊右衛門

2004年 日本
監督:蜷川幸雄
原作:京極夏彦『嗤う伊右衛門』
出演:唐沢寿明、小雪、椎名桔平、
香川照之、池内博之
(劇場鑑賞)



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