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うっかりジュードのお誕生日も過ぎ去ってしまった年の瀬ですが皆様いかがお過ごしでしょうかごめんよジュードお誕生日おめでとう!(<12/29) いや、先日のレイフの時みたく書きかけのテキストとか出てこないかなーと、ちょっと探してみたんですけどね、やっぱりそう都合良くはいかなかったよ(笑)。 さてそれはそうと、今年観た映画の感想は今年中に完結させたい!という気持がいちおうあるので、今更だけど感想書いてなかった分思い出して書くことにします。まずは「ライ麦畑をさがして」。これは公開時に劇場で観ました。ということは実に半年以上前(…)。ですので、言うまでもないことですが、今回の感想はあまり信用しないように(逃げ腰)。
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サリンジャーに傾倒している少年が主人公の青春ドラマです。彼は父親との確執とか大人達への嫌悪とか青春期の苛立ちを持て余してる18歳の少年で、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を肌身離さず身につけて愛読している。18歳って、もう少年と呼ぶにはちょっと厳しい年齢だけど、この子は実は事件を起こして数年間病院にいて今退院してきたばかりという設定なのね。そんな彼が、学校の課題で「その後のホールデン」というテーマが出されたことが発端となり、同級生の女の子と共に家出をします。サリンジャーに会うために。
うーんと、残念ながら、ありきたりな青春ドラマの域を出ていない、というのが率直な感想でありました。今年は4月の村上春樹新訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」出版に伴いサリンジャーが再注目されて、関連本やら雑誌の特集やら色々出ましたけど、そのブームに乗って公開の運びとなっただけなのでは…って、辛口ですか?まあ今日のところは大目に見て下さいよ。私サリンジャーに関することだとどうしても冷静な判断ができませんので(笑)。
何が気に入らないかというと、本作は、サリンジャーあるいは「ライ麦畑でつかまえて」という小説を単なるアイテムとしてしか使いこなせていないという点です。サリンジャーのこの小説は今ではもうほとんど古典のように扱われていて、「大人の世界に反抗する少年の物語」「インチキなものを拒絶する青春小説」という一般化した固定観念が一人歩きしてしまっている部分があるんだけども、まさにその流布しているイメージをそのまま少年から大人に成長するための材料として使ってるだけだという印象を受けました。「サリンジャーを神のように崇めていた少年が旅をして本当に大事なものは何かに気付く」と、単にこれだけで説明できてしまうストーリーである以上、極端な話、それならキーワードは別にサリンジャーじゃなくたっていいわけでしょ? なぜサリンジャーなのか、なぜ「ライ麦」なのかの必然性がピンとこない。もちろん設定上の理屈でいちおう説明がついているけど、あーつまり、理屈じゃないんだな、なんていうか、映画そのものからサリンジャーの空気を感じなかった。共感できなかった。(駄々っ子みたいな言い方ですみません。)
ただし、繰り返しになりますが、設定面でそれなりに「ライ麦」にちなんだ作りになっていたことは認めます。主人公がタバコを吸うことや死んだ兄弟を盲目的に尊敬しているところなどはホールデンになぞらえているんだろうし、それから、ジョン・レノン暗殺に関するエピソードは今更言うまでもありませんけど、他にサリンジャーが高校生の取材を受けたこと(そしてそれが転用されて隠遁のきっかけになったこと)や「ライ麦」を最初に持ち込んだ出版社に断られたことなどが少年の口から語られますが、これらは全部事実(とされていること)です。あ、あと彼が持ち歩いてる「ライ麦」が古いタイプのペーパーバックだったのはちょっと嬉しかったな。私写真でしか見たことなかったんです。初期のあの表紙、あれは今や幻なのですよ。
しかし「物語のラストの後、その後のホールデンについての仮説を立てろ」だなんて、怖ろしい課題を出すなあ(笑)。私にはとても答えられない。作者のサリンジャーにだって、果たして書けるんだろうか。「聖書に一章追加するようなものだ」というような台詞がありましたが(多分)、この点だけはまったく同感でした。
****** ライ麦畑をさがして 【CHASING HOLDEN】
2001年 アメリカ / 日本公開:2003年 監督:マルコム・クラーク 出演:DJクオールズ、レイチェル・ブランチャード、 ショーン・カナン、コリン・フォックス (劇場鑑賞)
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