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ロシアの文豪プーシキンの名作「エヴゲーニイ・オネーギン」の映画化です。これ原作は詩なんですよね、確か。しかも韻文だったような。いや、読んだことはないです。
主人公は、教養はあるのだけど厭世的で、無気力に放蕩を続けているという19世紀末の典型的ロシア貴族オネーギン(レイフ・ファインズさん)。叔父の遺産を相続した片田舎で詩人のレンスキイと知り合い、彼の恋人であるオリガの家を訪れた際オリガの姉タチヤーナ(リヴ・タイラー)と出会う。タチヤーナは一目見るなり都会的で魅力的で麗しいレイフ…じゃなかったオネーギンにくらくらしてしまい夜通し恋文をしたためて彼に送るのだけど、オネーギンはあっさり拒絶。それでまあ色々あって6年の月日が流れ、ある日都会でばったり再会してみるとタチヤーナは洗練された女性に変身しているわけです。ああ君はこんなに美しかったのか!と気付いた時には彼女は人妻。でも諦めきれないどうか僕の愛を受け入れておくれタチヤーナ、ダメよできないわ何故今更そんなことを言うのオネーギン、…って、要するにこてこてのメロドラマなんですけど。
この作品が公開された2000年頃というのはまったく映画に関心がない時期でしたが、でもこれが公開された時のことはすごく良く憶えていて、というのはその頃私はごく初歩のロシア語講座を受講していたんですよ。で、その先生という人がめちゃくちゃプーシキンが好きで、特にこの「オネーギン」に出てくるヒロイン、タチヤーナの熱烈なファンだったのね。だから先生はこれが映画化されると知って大喜びで観に行った…のですが…、感想はひとこと「がっかり…」と(笑)。お気に召さなかったようです。
原作がある話なのでストーリーに文句つけても仕方ないですけど、まあ確かに演出が手薄というか、脚本的に説得力に欠ける感じはありました。文学的に思い入れがある人が観た場合には(もしくは全く何も知らない人が観た場合にも)特にそこら辺が納得できない、かも、しれない。 ただ、撮り方は綺麗で非常に美しい。監督のマーサ・ファインズさんはレイフの実の妹さんですけど、もともとCMとかミュージックビデオ系の監督として活躍してる方だそうで、なるほど視覚的なインパクトのある映像だったと思います。真っ白な雪道を馬車で疾走しながらフラッシュバックで回想を挿入したりとか、そうだ、あとね、レイフが水辺でだらしなく横たわっているシーンがあってね、これは実は対岸から見ているタチヤーナの視線なんだけど、ここで彼を、こう、足の方から上半身に向かってゆっくりと撮るんですよ。舐めるようにねっとりと。いやあこれが官能的で実に良かった。妹が兄をあんな風に撮ってると思うと萌えだなあ〜。芸術一家ファインズ一族万歳。音楽を担当したのもレイフの弟さんだそうで、もうファインズ兄弟姉妹総出の一大イベントでありますよ。同じく映画スターである末弟ジョセフがなぜ招集されなかったのか不思議でありますよ。
それで本編とは関係ないですが、この作品見てもいいかなと思ってるアナタにはわたくし激しくDVDを推奨いたします。いやもう特典が!東京国際映画祭での記者会見の模様が最高に面白いですよ!黒い服でシャープに決めて顔を上げ常にはきはき質問に答える監督マーサ(妹)、そして真っ赤なシャツ(→こんな)に身を包み頬を染めつつ俯きながら頑張って喋ってる主演レイフ(兄)。君らどっちが年上ですか(笑)。「今回レイフさんは製作総指揮も兼ねていかがでした?」みたいな質問されて「いや、えと、僕は、相談に乗ったりしただけで、あの、実務的なことは一切わからないです…」って、そんな身も蓋もない言い方しちゃダメじゃんよレイフ兄さん!しっかり!(笑)
****** オネーギンの恋文 【ONEGIN】
1999年 イギリス / 日本公開:2000年 監督:マーサ・ファインズ 出演:レイフ・ファインズ、リヴ・タイラー (DVD鑑賞)
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