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2003年01月24日(金) |
チャーリング・クロス街84番地 |
これは良いです! 地味なのにじんわりと心に染み入る隠れた名作。本好きな方には特におすすめ。鑑賞のきっかけを下さった「Dailymovie」の百合木まりさんありがとうございました! (無断リンクごめんなさい)
ニューヨーク在住の女性作家とロンドンの古書店主、海を越えた二人の20年にわたる心の交流のお話。手紙と本のやりとりだけで、生涯一度も会わずして築き上げられた信頼関係。 とある大手映画データサイトさんでは「究極のプラトニック・ラブ」などと紹介されてましたが、私はプラトニック・ラブと断定してしまうのはちょっとどうかなあ、という気がしました。まあそういう要素が全くないとは言い切れないけど、それ以前にこれは、男女間の愛とはまた別の次元での相互理解であり、―― 何て言うかなあ、わかりあえることの愉悦、というか。「春に向かって恋愛の詩が読みたいわ、でもキーツやシェリーみたいに甘いのはダメよ」って注文すれば、厳選された、気持ちにぴったりのエリザベス朝の美しい詩集が届く。こういう関係は、愛はともかく理解がなければ絶対に成り立たない。それゆえに得難く、美しいのです。
アン・バンクロフトは書籍を愛する女性作家を実に見事に演じています。彼女は収集だけが目的ではなく、純粋に本が好きなのね。本を読むこと、とりわけかつて誰かに読まれた古書のページを再び自分が捲ることに、心から幸せを感じている。 例えばね、100年前の貴重な初版本を受け取って「私が持つなんてなんだか悪いみたい。こういう価値ある本は英国の邸宅に置かれるべきよね、こんなボロアパートではなく」とふと呟くシーンがあります。すると傍らにいた彼女の友人が「でも、もしも私が本だったら、(英国の大邸宅よりも)この部屋にいたいと思うわよ」と返すんですが、この言葉を聞いたときのアン・バンクロフトの嬉しそうな表情といったら! 「ほんとに?ほんとにそう思う?」って繰り返しながら、この上なく満ち足りた笑顔を浮かべるんです。 そうして、彼女の小さな部屋が選び抜かれた文学の宮殿となる。長い長い期間を振り返ってふと気付けば、文学はここにある。…うう、いいなあこういうの。
なんか私一人で盛り上がってますけれども、ええと、アンソニー・ホプキンスの演技ももちろん素晴らしいです。律儀で真面目な書店主がぴったり。ハンニバル・レクターだけがホプキンスではありませんよ皆さん! それと彼の妻役で何気にジュディ・デンチが出てます。
これ劇場未公開だったそうで、意外だなあ。ちょっと古めですが、大事に手元に置いといて、時間をおいてこれからまた見直したくなるような作品です。IMDbのデータは→コチラ!
****** チャーリング・クロス街84番地 【84 CHARING CROSS ROAD】
1986年 アメリカ / 劇場未公開 監督:デヴィッド・ジョーンズ 出演:アン・バンクロフト、アンソニー・ホプキンス、 ジュディ・デンチ、ジーン・デ・ベア (DVD鑑賞)
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