今は昔ほど癌という病気も怖くなくなったとはいえ やはり近しい人にその疑いがあると、心中穏やかではなくなる。
ひと月ほど前に実は実父にその疑いが出てきた。 あるきっかけで受けた血液検査では、腫瘍マーカーの値が通常の値の4倍あり かつその後受けた超音波検査では“その部分”が 通常のおよそ倍以上大きいものであったためである。
自分で少し調べてみてみると “時として骨やリンパ節に転移することもある” という記述を見て一瞬ギョッとした。 なぜなら父方の祖父が骨癌で亡くなっているからだ。 おまけにその祖父、病名が分かる前にはしきりに腰痛を訴えていたらしく 最近になって腰痛がひどくなった実父と、否が応でも重なってしまう。 (もっとも腰痛は年のせいじゃないかと最初私は苦笑していた。 検査前の話である) この転移の可能性云々については 両親も知っていたかもしれないが、彼らから聞くこともなかったし 結局、私の口から言い出すこともできなかった。
それからというもの まだそうと決まったわけじゃないんだしと思いながらも 心のどこかがかすかに波立つような落ち着かない日々が続き 半月前に受けた生検の結果が出るのが、今日だった。
午後、実母からの短いメールによると 採取した組織片の中に癌細胞は見つからなかったという。
安堵感で体中の力が抜ける気がした。 というか実際に上半身は力が抜けた。
不思議と何度も何度もため息が出てきた。
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