昼頃、徒歩で隣町まで出た帰りのことだ。
大通りから少し離れた道幅3mほどの道路を行こうとしたところ 車道の真ん中付近を車椅子で移動しているおじいちゃんが見えた。 どうやらすぐ傍ににある病院から一人で抜け出したらしく この寒空にパジャマだけの格好。
一方通行とはいえ周囲にはスーパーもあり トラックも通れば乗用車も通る。 案の定おじいちゃんの車椅子の後ろには 抜くに抜けずに2台、車が連なっていた。
しかし誰もそのおじいちゃんに手を貸そうとしない。 周囲に人がいなかったわけでもなく 皆目に入っているはずなのに せめて車道と歩道の柵の切れ目まで押してあげてもいいだろうに どうしてだろうと不思議に思う。 そんなに世の中が忙しいのかしらとも思う。
『危ないから押しますね』 そう言って後ろからハンドルを握り とりあえず車道の端に車椅子を寄せ、後ろに並んだ車を見送りながら おじいちゃんの目的地を聞くと20m先の郵便局。 どうせすぐそこだし、また車道中央に出ても危ないので そのまま押していくことにした。 ふと下を見ると、右足にギプスが巻かれている。
スロープを登って局内に入ったところで 『もうここで結構ですよ。本当にありがとうございました。』 そうおっしゃるので、大丈夫かなと少し心配になって尋ねたが 『大丈夫、大丈夫』と繰り返すだけ。
結局そこでおじいちゃんとは別れた。
そういえばお互い、顔を見ないままだったなと気付いたのは 帰宅して暫く経ってからだった。
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