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結果発表■2003年02月14日(金)
試験が終わってから発表まではそんなに長くなかった。

その間、生徒と僕は会うことは無く、連絡も一日に一度メールを交換するくらいだった。





朝起き、僕は洗車場へ車を洗いに行った。

結果発表は正午過ぎと聞かされていた。

僕は何もせずにいると落ち着かなかったので、それまでの時間つぶしのつもりだった。





10時頃、生徒から電話が来た。

電話を取り、僕は洗車を中断して運転席に乗り込んだ。

「昼頃って言ってたけど、なんかもう速達みたいのが来てさー。」

つまらなそうなしゃべり方だった。

「不合格って書いてあるんだけど―。」

僕はからだの力が抜けてゆくのを感じた。

その時僕は、そっか…、としか言えなかった。





「ねえ、私頑張ったよねえ。」

うん、がんばったよ。よくやったよ。

「それで落ちるってどういうこと?ねえ。」

生徒の声は、始めは沈んでいるばかりだったが、次第に強い感情が込められていった。





「あー!もう、これで親戚とかみんなに落ちました、落ちましたって言わなきゃいけないんだ、親に恥じかかせるんだ!親にどう謝ればいい!?あーっ、もう最低!」

生徒の感情を抑えることは、彼女自身にも出来なかった。

「しかも、私、彼氏との約束で大学落ちたら結婚だよ。何?結婚って。どうせ結婚するんだったら子供堕ろすんじゃなかったっ!」

生徒が吐き捨てた言葉に続いて、バカン、バカンと何かが打ちつけられる音が聞こえた。

おいっ!大丈夫か?何した?、僕がそう答えても彼女は答えようとしない。

嫌な静けさだけが伝わった。

大丈夫か!?

「…壁を殴った…手が痛い…痛い…。」

生徒は泣いていた。

な…大丈夫かよ!?ひどい事になってない?

「うるさい。来月にピアノ弾かなきゃいけないんだから折るわけないでしょ。」

僕が、今から君の家へ行く、と言っても彼女は会いたくないと拒んでいた。





「あ、彼氏からキャッチが入った。また後で。」

そう言って、生徒は電話を切った。





5分後、生徒が電話をかけ直してきた。

「もしもーし。」

彼女は驚くほど落ち着きを取り戻していて、唐突に、ヤバイよ、と言った。

「彼氏と少ししゃべったら急に気分が楽になっちゃった!やばいなー、あの男は何者だ?ヤバイ、私、彼氏のこと相当好きかも知れなーい。」

僕は、一つため息をついてから、そっか、落ちついたんなら良かったよ、と言った。

「あー、私を落ち着かせられなくって悔しいんでしょー?しかも私が彼氏に慰められたってのが悔しいんでしょー?」

いや、別に。今は、君が落ち着く事が第一だよ。

「あー、もうウソ、ウソ。すっごい悔しいんだよ、この人は。」

うるっさいよ、こら。





その晩、僕は生徒の家へ行き、今後の試験のことと勉強の方針について話し合った。

そして、「はい、感謝してね!一ヵ月後に。」

とチョコレートをもらって僕は家へ帰った。

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