初日■2003年02月05日(水)
入試初日。
前日の約束どおり、朝8時に生徒の家へくるまで迎えに行った。
インター・フォンを鳴らすと生徒の母親が出迎え、すみません、お願いします、と言われ、厳寒に迎え入れられた。
母親とそんな挨拶を交わしていると、生徒が2階から駆け下りてきた。
ほぼブロンドに近い色に染めた髪、重ねてのせただけのような黄色のマフラー、それらを際立たせるように黒のニットに黒のスカートだった。
そして、化粧も完璧で。
「どう?かわいいでしょ!?」
それが試験当日の朝に生徒が発した第一声。
かこいいけどー、どこへ何しにいくつもりだー?
「いや、女はね、見た目が決まると、気分的にも乗ってくるんだってば!」
生徒の用意が整い、母親に見送られ、僕たちは試験会場へ向かった。
道中、生徒は、緊張する!どんな問題が出るんだろ?!と騒いでいた。
よしよし、落ち着け、落ち着け、と何度もなだめた。
試験会場までは車で40分ほどで、予想していたほど時間はかからなかった。
会場への入室終了時刻まで大分あったので、受験生保護者駐車場とかかれた場所に車を停めた。
そしてしばらく、生徒と僕は車の中で、あれはどうだったとか、落ち着きなく質疑応答をしていた。
そうこうしているうちに、時間は過ぎ。
「じゃ、行って来る!」
よし、がんばっておいで。
「うん。終わったら、電話するね。」
そう言って、彼女は車を降り、会場の中へと消えていった。
その後は1教科の試験が終わるごとに、彼女は電話をかけてきて、あれが出来た、とか予想が外れたとかと伝えてきた。
試験が終わる少し前に朝と同じ場所に駐車し、僕は生徒が見つけやすいよう、車を降りて彼女を待った。
受験生の群がりに混じって生徒も会場を出てきて(遠めでも彼女はすぐに判った)、つつつと僕のところへやってきて車に乗り込んだ。
おつかれさん。
「おつかれ!ってゆうかすごいよ!」
彼女は興奮して、出来たとか出来なかったとか立て続けに話した。
そっか、そっか。
よくやったね。
「ってゆうかさー。」
生徒は弁当箱をとりだし、ほら、と開いて僕に見せた。
どーした?全然食べてないじゃん?!
「胃が痛くってさー、食べる気がしなかったんだってば。」
彼女は、あー、終わったら急にお腹空いてきた、と車の中でパクパクと弁当を食べ始めた。
帰り道でコンビニに寄り、、生徒の家に戻った。
そして、買ってきたおにぎりとから揚げを食べ、模範解答の作成と翌日に向けての対策をした。
終わったのは22時、けれど家に帰ってきてからも僕は眠れず、同じく、寝付けない生徒から電話がきて、しばらく長電話をした。