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Provably, she asked herself of me.■2002年09月03日(火)
「ねえ、どうして?」
生徒は僕に問うた。
生徒は最近、中学の同級生で、「あの頃、わたしのことが好きだってよく分かってた」という男子高校生の話をした。 その男子高校生から前触れもなく手紙が来て、その後連絡を取り、バスケットをしたりしたそうだ。
「とてもね、純な感じなの。人前で女の子と手を繋ぐのも恥ずかしくて出来ない、みたいな。でも、おたくっぽくもなくて、クラスでも人気があった子で、んー、なんて言うんだろう。」
さわやかな男の子なんだ。
「そうそう。頭もいい、運動もできる、いい人なんだよね。でね、その子に言われたの。『○○さん(生徒の名字)は昔と変わってなくて可愛いね』って。」
名字でしかも“さん”付けなんだ。初々しいね。
「でしょ。なんでかな、私、この人はわたしのことが好きなんだな、っていうのはすぐに分かるんだよね。わたし、人の気持ちに気づくとか、そういう特殊な才能があるのかな?どう思う?」
どうなんだろうね。
「しかもね、『○○さんの前だと、他の人に言えないような悩みも言える気がする』って。ねえ、どうしてだと思う?」
そうだな、実際君はいろいろな人の悩みを聞かされたりするんだろう?
「私にしてみれば“そんなの悩みの内に入らないよ”っていうような話でね。話す人にとっては他人にはなかなか言いづらいことかも知れないけどね。」 君の悩みは他の人の悩みよりずっと上のランクにある。
「そう、みんなより、多分、大変な思いをしてるつもりだけど、悩みを聞いてもらうとかはないよ、わたし。」
そうか。強い子だもんな。 でも、いざというときは、聞き役になるよ、僕が。
僕がそう言うと、生徒は言葉で返答をしなかったが、代わりに微笑みを返してきた。 僕の好きな笑顔を。
「なんで私に悩みを言うのかな?ねえ、私って変わってるのかな?」
君が他の人に比べて特別に敏感なのか、それとも、君がみんなを、その、自分の内面を出そうという気持ちにさせているのかも知れないし。悩みを打ち明ける人が多いというから、心を開くムード作り、そういうのが上手なのかもよ。
「まあね、こっちは聞いてるか聞いてないか微妙な態度してるから、喋る人にとってはそれがかえっていいのかも。そうそう、わたしね、“この人にはこういう風に対応すればいい”っていうのを決めてるんだよ。」
ほう。
「ちなみに、先生の場合は、“どうして?”って聞くのが一番だね。」
思わず、僕は笑った。
「実際は自分で分かってることでも、いちいち先生には聞くの。」
すると、僕は説明しようと考える、か。
生徒も笑いながら言った。 「そうそう。」
やられてるなあ。
「どう?なかなかでしょ、わたしも。でも、なんでこう人の、ってゆうか、男の扱いが上手いのかな?どうして?」
ははは、早速来たな、質問責め。
「ちがうー、今のは意識してないってばー。」生徒はきゃあきゃあと笑った。
ずっと聞いていると、あれだね、君の質問は自分に対する疑問が多いね。“自分とはどういう人か”という風に、関心の方向が内向きになっている。
「ああ、言われてみれば、そうだね。なんでかな?」
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