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2006年02月13日(月) 第131週 2006.2.6-13 「プライドと偏見」、「ラブ・アクチュアリー」

(「プライドと偏見」)
先週、映画「プライドと偏見」をDVDで見ました。
原作である小説「高慢と偏見」とBBCの大作ドラマ(2004年5月17日、参照)を踏まえての映画鑑賞だったのですが、正直言って物足りない感じがしました。
そもそも原作で文庫本たっぷり二冊分(邦訳)のボリュームがあるストーリーを二時間の映像に落としこむには、どうしても展開に無理が出てしまいます。しかも、この本作の場合、クライマックスに至るまでに様々な伏線が張られているために、それぞれのサイド・ストーリーを外せないという厳しい制約がついています。
更に言うと、本作品の真骨頂はタイトルにあるような主人公たちの心理的な変化の過程にあるので、その辺りを表現しようとすると、普通の恋愛ドラマ以上にじっくりとした展開、時間の経過、がどうしても必要になるのではないかと思います。
今回の映画では、原作の味わいを余すところなく伝えるというよりも、主人公の女性(主演女優キーナ・ナイトレー)をフィーチャーするという目的に絞り込まざるを得ず、その限りでは悪くない映画だと思いますが、原作の映像表現として評価するとどうしても物足りなさが残ります。公平に見て主人公=エリザベスのイメージは、BBCドラマの方が原作に近いと思います。キーナ・ナイトレーのリズはシャープ過ぎてあの家族の一員として浮いていました。

というわけで、私としては原作の素晴らしいストーリーを堪能するためには、小説を読むかBBCドラマを見ることをオススメしたいところです。今回の映画と比べるとよく分かりますが、BBCドラマは、キャスティングといい、それぞれの味わい深いキャラの立ち方(脚本)といい、本当によくできていたと思います。

(「ラブ・アクチュアリー」)
今回、あわせて購入したDVDが「ラブ・アクチュアリー」でした。数年前に日本でも話題になった映画だと思うのですが、ついでに見てみることにしました。
こちらは予想以上に楽しい映画でした。クリスマス・シーズンにおける様々な人々のエピソード集という作りであり、それぞれのストーリーは単純でよくある筋立てなのですが、細部にみられる場面設定、捻り、ユーモアがイギリス風で味わい深いと感じました。やはりイギリス風としてのキーワードは、ちょっと控えめな感じ(understatement)ということになるでしょうか。
メッセージはストレートでありながら、表現方法に関してアメリカ流のど真ん中直球勝負という感じではなくて、少しずつ真ん中からずらせた配球になっている感じが、とてもイギリス的だと思いました。

さらに、ロンドン滞在者にとっては、ロンドン市内の映像がたくさん出てくるのも楽しめますし、アメリカ人とイギリス人がそれぞれの英語を比較するくだりも面白くて興味深い場面でした。人間関係やストーリーが絡み合っているので、ウェブ・サイトを先にチェックしてからみると、より楽しめるかもしれません。

(ワーキング・タイトル社)
実は、先週、もう一本、日本で買ってから見る機会を失っていた映画「ブリジット・ジョーンズの日記」も見てしまいました。公開当時はそれなりにヒットしたようですが、こちらは私の趣味にはあまり合いませんでした。ラブ・コメディは大げさな料理を施すよりも、短くあっさりと上品にまとめたものの方が楽しいような・・・。

ところで、映画事情について疎くて後で知ったことですが、以上の三本の映画は互いに密接な関係があるようです。
最大の共通点は、ワーキング・タイトル社という英国の同一会社によって製作された点です。同社は、90年代後半以降の映画界において、英国流ラブ・コメディのヒットを立て続けに飛ばした、近年もっとも成功している欧州の映画製作会社のようです。
イギリス映画というと、古典的大作主義の重厚なものを想像しますが、上記の三本はそんな感じがまったくしないお洒落で軽快な作りになっています。当然のことながら、監督、脚本、俳優などで三作品には多くの共通点があります。ワーキング・タイトル社映画の系譜に属する他の作品として、「ノッティングヒルの恋人」「フォー・ウェディング」などがあるようです。

また、「ブリジット・ジョーンズ」のストーリーは、小説「高慢と偏見」のパロディになっています。その名も同じミスター・ダーシーをコリン・ファース(BBCドラマ版でのダーシー役)が演じています。ダーシーの役どころまでが「高慢と偏見」をなぞっているという徹底したパロディぶりです。それが面白いと感じられるかどうかはともかく・・・。

そんなわけで、言われてみれば、最近、英国が舞台で似た感じのラブ・コメディ映画をよく見聞きすると思っていましたが、それらを供給していたのがワーキング・タイトル社という同じ英国の会社だったという発見をした週末でした。


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