Experiences in UK
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2006年01月23日(月) |
第128週 2006.1.16-23 映画「プライドと偏見」、英国のナショナル・デーは? |
(映画「プライドと偏見」) 先週、日本で映画「プライドと偏見」が封切られ、日本国内での前評判がかなり高いというニュースをネット上で見ました。 「プライドと偏見」は、言うまでもなく英国の国民的作家ジェーン・オースティンの代表作“Pride and Prejudice”(邦訳は「高慢と偏見」ちくま文庫など)を映画化したものであり、英国では10年前に作られたBBCのドラマが爆発的な人気となったことを以前に紹介しました(2004年5月17日、参照)。 同ドラマでダーシー役を演じた俳優コリン・ファースは、あるインタヴューで「ダーシー役のイメージを消すのに長い時間を要した」と語っていました(それでもいまだに、コリン・ファースといえば「あのダーシー役の」と付け加えるのがお決まりになっている感あり)。それほどに、構成や配役、映像などの点でインパクトのある非常に良く出来たドラマでした。
さて、映画「プライドと偏見」ですが、英国では昨年夏に劇場公開されていました。その時の英国内での評判は承知していないのですが、個人的にはあのBBC版ドラマと比べると見劣りするだろうという先入観のもとにスルーしてしまいました。 今回、日本での評判等を調べてみると、やっぱり見てみたいという気がしてきました。映画の出来もさることながら、全編英国オール・ロケで撮影されたということなので、英国の美しい風景を堪能できそうなところにも興味があります。例えば、こんなところにも映画に関する情報が掲載されていました。 というわけで、早速、当地で2月に発売されるDVDを予約購入することにしました。
(英国民のナショナル・アイデンティティ) ブラウン蔵相がBritishnessに関して一家言を持っていることは、過去に紹介したことがありました(2005年3月21日、参照)。また、英国内でナショナル・アイデンティティに関する議論がくすぶり続けていることも以前に何度か紹介したことがありました。 15日、同蔵相がある講演のなかで、英国民のナショナル・アイデンティティを確固たるものにするためにナショナル・デーを創設すべきだとのアイディアを披瀝したというニュースが伝えられています。米国の独立記念日(7月4日)のような日を制定すべきだという主張です。 昨年7月7日の同時テロ事件において、英国籍を持った人物が犯行に走ったという事実もこのような問題意識の背景として語られていたようです。様々な宗教・文化に対して比較的寛容な多文化国家である英国において、国家としての統一性や一体感が希薄化し過ぎているのではないかという危機感は、しばしば語られるところです。
多様性を認める自由こそがブリティッシュネスの根幹であるとして、改めてユニオン・ジャックへの国民の一体感を高めようという試みは、論理的に矛盾を孕んだものであることは自明です。伝統的な英国民の間でも、各個人にとっての国家として意識されているのは「英国」なのか「イングランド」「スコットランド」等々なのかという問題があるなかで、イスラム系その他諸々の移民たちと共有できる国家意識を涵養するのはなかなか困難なことのように思えます。 そもそも、このような機微な話題に関して、影響力が絶大な政治家が発言しているにもかかわらず国民の間で喧喧諤諤の議論が巻き起こるという事態に至らないことが私には不思議です。この手のテーマは時々メディアに登場するのですが、多くの一般国民は無関心なように感じられます。実際、身近な英国人に対して意見を求めても、今のままで何が問題なのかとか、自分とは関係のない話題であるとか、どこか冷めている印象があります。 この国のナショナル・アイデンティティの問題は、実に深遠です。
(英国のナショナル・デーは?) それでは、英国のナショナル・デーが制定されるとしたら、いつになるのか?現在の英国のナショナル・デーに関しては、ココに説明がありますが、要するにややこしくて統一的なものは存在しないということです。
第一候補として考えられるのは、Remembrance Day(11月11日)です。これは、第一次大戦などで亡くなった戦没者を追悼する日であり、現在、休日にはなっていませんが、同日の午前11時には全国民が戦没者に対して二分間の黙祷を捧げます(かつて、それを知らずにスーパーで買い物をしていて、周囲の買い物客や店員が突然静止して黙り込んだ意味がわからず、うちの家族だけが動き回り、おまけに子供が大声で泣き出したというバツの悪い経験をしたことを思い出します)。 ただし、この日は上述のような意味を持った日であり、日本の建国記念日や米国の独立記念日と同様のナショナル・デーとして扱うのは、趣旨が違うという意見があるようです。
タイムズ紙(1月14日付)は、以下の候補をあげていました。 ・女王の誕生日(4月21日) ・シェークスピアの誕生日、かつ聖ジョージの日(4月23日、ただし聖ジョージはイングランドの守護聖人) ・メーデー(5月1日) ・Dデー(6月6日、1944年ノルマンディ上陸の日) ・ヘイスティングスの戦いの日(10月14日、1066年ノルマン・コンクェスト=現代英国の歴史の出発点とされるノルマン公ウィリアムスによる英国征服が確立した日) ・トラファルガー海戦の日(10月21日、1805年ナポレオンとの最大の海戦で勝利した日) ・リメンバランスデー(11月11日、1918年第一次大戦の停戦協定が発効した日)
どれも一長一短なわけですが、しがらみの少ないむか〜しの歴史に由来する10月14日というのが一番可能性が高いのでしょうか。いちおうまだサマー・タイムですから、休みにする意義もあるということで。
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