* * 今日の空色 * * by * yuk!na
モクジ * カコ * ミライ
手紙が届きました。
旧住所の宛先で。 転送されて届きました。
私は引越先の住所を人に知らせませんでした。 その必要性があまりなかったのと、少し煩わしかったのです。
そして、それに伴ってメールのアドレスが変わりました。 プロバイダを変えたのです。 でも、それも教えませんでした。 なぜならホットメールを頻繁に使っていて 本アドに送ってくる人は、ほとんどいなかったからです。
でも、教えなくてはいけない。と思った人がいました。 それでも、その人と連絡を取るのが、苦しくて。
そのまま、触れずに1年ほどやり過ごしました。
そうして、手紙が転送されて来たのです。
その人は、亡くなった親友のお母さまでした。
連絡を絶った私を心配していたのでしょう。 どうにか連絡を、と思ったのでしょう。
洋梨を送ったと言うのです。
しかし、それは宅配業者に届かないと言われたそうです。
その後E-mailを送ったようです。
それも、届かなかった。
そうして、手紙が転送されるのを願って 手紙を送ってくださいました。
その気持ちに嬉しく思うとともに痛みが走っていくのです。
ずっと、彼女を避けていました。 痛みを共有することが、最善でもなく。 そして、結局は共有できるはずもなく。 一緒に、痛みに溺れてくだけのような感覚を覚えたのでした。
だからあの子の誕生日にも、命日にも。 会いに行くことはおろか、連絡さえもせずに過ごしていました。 何回か、独りでお墓参りをしたけれど。
自分一人で、偲んでいても、それはそれでいいのだろうと。 自分に言い聞かせて。
少し寒いあの駅から、バスで団地を抜けて、桜の木で溢れたあのお墓の前で。 独り泣いたあの日。
でも、独りじゃないと泣けないよ。 一緒に泣くのは、痛い。
どうしてだろう。 でも、痛みは一緒じゃないんだ。
同じ人の死を悼むのに。
痛いよ。
すぐに。 メールを送りました。 ――連絡をしないで、すみませんでした。
返事がきっと来る。 洋梨がきっと届く。
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