MEMORY OF EVERYTHING
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2002年09月09日(月) |
catch your eyes |
今夜もまた、アイツの目はオレを光のように射抜いた。 目を閉じると、その代わりに記憶の中でアイツの瞳が開く。
「目が印象的」だとか、「神秘的な瞳」だとか、小説なんかに出てくるそんな表現を、いつもオレは莫迦にしていた。 現実では、他人の目なんかそんなに印象に残りはしないのだ。長いまつげの下だったり、はれぼったいまぶたの傘を被っていたり、眼鏡の奥にひっそりと隠れていたりするだけで、それはただの真っ黒いコインに過ぎないのだ。
少なくとも、アイツ以外のヤツはそうだった。
アイツのあの目に初めて出会った時、身震いしたのを覚えている。 多分その時、アイツはオレを憎んでいたわけでも、欲していたわけでも、羨んでいたわけでもなく、まして好き好んでいたわけでもなかったに違いない。 しかし、その時のアイツの目には、何か強い感情があった。 ――いや、実際は本当にただオレがそこにいたから、だから見上げた。それだけだったのかもしれない。 それならそれでも今はいい。オレが感じた何かがアイツにあったのは確かだ。 そしてアイツは結局、オレを忘れられなくなった。 オレがアイツを忘れることがないように、アイツも恐らくどこまででもオレを追ってくるのだ。 アイツはわかっているだろうか。 おい、知ってるか? 「惹かれ合う」って言葉さ。
追いつ追われつして成立するオレたちの関係、オマエのその目で今はオレの背を見てるがいい。 いつか近いうちに必ず、オレは逆襲してやるよ。
これ以上近づけないくらいに目と目を合わせて、オマエを身震いさせてやる。
さあ。明日はどこで会おうか? ――そうだな、この国で一番でっかい銀行の屋上で、待っていてやるよ。
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