MEMORY OF EVERYTHING
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2002年09月02日(月) Where will you take me to?

私は重ねた両手の人差し指で引き金をひいた。
一瞬間、耳に入る全ての情報がその音だけに支配される。相変わらずの爆音だ。

あの朝、突然私の元にやって来ることになった黒い銃身は、だいぶ私の手に馴染んできていた。
射撃の反動にも、簡単には飛ばされなくなった。
最初の頃、近所の空き地で練習のために銃声を響かせていた時は、引き金を引く度に体が弾かれて、しつこい程に後方へ尻餅をついていた。
今、練習場所は郊外の廃墟ビルの地下に移った。空き地での妙音に人々が騒ぐことはなかったが、いつ銃を構えた自分の姿を目撃されてもおかしくなかったからだ。
あの朝から、確かに人生は想像し得なかった方向に動いていた。それまで過ごしていた毎日が、全て捨て去られたといっても過言ではない転換だった。
予期せぬ男の襲来はあれから幾度となくあったし、それらは全て、あの時と同じように銃弾に沈むと一瞬で霧散した。
本当にこちらの身が危うくなったこともあったし、もう少しで一緒にいた友人まで巻き込まれそうになったことすらあった。

しかしそうはいっても、自分の全てまでが一緒に変わったとは思いたくなかった。
住民は射撃練習をする私の姿を目撃しても、手元の銃が本物だとはまさか思わないだろうが、妙な噂を立てられるのは我慢ならなかったのだ。

そんな時に、偶然に見つけたのがこのビルだった。
周囲に人はほとんど来ないようで、以前だったら私でも好き好んで近づかないような荒れ果てた建物だったが、今はそれが幸いだった。
照明もろくにつかない、暗く薄汚れた部屋で、私は一人銃声を響かせる。
怖くもなかった。
もしここで何者かに襲撃を受けたとしても、手には心強い味方がある。
しかし――そう感じている自分に気づいた時、別の恐怖が心を覆った。

拳銃という武器を使うことを当たり前としている自分がいる。

謎の男は銃弾を受けて空気に掻き消える。
しかし、「普通の人間」だったらどうなる?

身の危険を楯にする時、私はこの銃で人間を撃つのだろうか?

いつか私はこの銃で、人間を撃つのだろうか?



私は人を殺せるのだろうか。


ゆり |MAIL

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