MEMORY OF EVERYTHING
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「キライ! ・・・キライ、キライ、キライ!!」
アタシがそう言うと、目の前のコイツは何でもなさそうな顔で、でも口では違うことを言った。
「哀しいな。そんな風に言われると」
だから、余計に腹が立つ。
アタシの言葉が、どれだけアナタの心臓に穴を空けられるっていうの? アナタの目のどこら辺に、アタシの姿が映っているの? アタシはどこにいて、アナタはどこにいるのよ?
「嘘ばっかり」
鬼を退治する正義の死者のように、思いっきり睨んでみたけど、結局それは絶望という風になって返ってくるだけ。 それなのにアナタはまだ言うの?
「嘘じゃないよ」
アナタの仮面をはがすのはアタシじゃダメなの? 全部見たいと思うのはワガママ?
アナタの悲しみも アナタの涙も アナタの怒った顔ですら
アタシは見た事がない。
ねえ、せめて――
いつもと違った笑顔を見せて。
「キライよ」
「ね、そういう事は『好き』って言いながらするものだよ」
座るソイツの頭を抱きしめたアタシに、また、変わらない調子でソイツは言った。
それから、
「こうしている時、僕がどんな顔してるか、知ってる?」
不意に言ったその言葉に、アタシはハッとして抱きしめていたソイツを突き放した。
・・・何てことない。いつもの顔だ。
「なるほどね」
と、アタシはあんまり上手くない笑顔を零してしまった。
アタシが見てないときにだけ、違う顔してるんだ。 なるほど、アタシにはまだ隠しておくつもりなの。
「・・・キライよ」
今度はきちんと笑って言った。
そういうつもりなら、まだしばらく付き合ってあげる。
アタシの知らないアナタの全部が次第にアタシにバレるまで。
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