-殻-
INDEX| PAST| NEXT| NEWEST
君は先のことを話したくて、なのに口をつぐんでしまった。
それは僕がまた逃げ出すことを恐れていたから。 僕がいなくなることを、君は恐れているんだね。 はじめてはっきりと、君はそれに触れた。 そして、将来を語る相手が欲しいのだ、と言った。 僕は君のそんな言葉に触れてしまうと、 もう忘れたはずの感情に揺さぶられる。 期待してはいけないのに。 なにひとつ、信じるに値する愛情などないのに。 将来への漠然とした不安を、少しずつ君は口にする。 僕はそれを聞いて、思うところを伝える。 こんな会話が、君の求めていたものだろうか。 僕にはどうしてもそうは思えない。 だって、その会話には僕等がいないもの。 君の見ている将来に、僕と君がいるという約束は、 どこにもない。 君はそれを知っていて、だからこそ言わない。 いや、君はまだ本当のことを言っていない。 そう、君が話したいのは。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |