-殻-
INDEX| PAST| NEXT| NEWEST
薄曇の日曜の朝。
気だるい目覚め。 どことなく重い空気。 寝息を立てる君を残して、そっと布団から抜ける。 インスタントのコーヒーを薄めに入れて、灰色の空を眺める。 何をしているのだろう。 君は目を覚まさない。 僕はもう、君の部屋のどこに何があるのかもわかっていて、 君が寝ていたってこうしてコーヒーを飲み、新聞を読み、 君が目覚めるまでに朝食の支度をしておくことだってできる。 だけど、それがどうした? 結局は日常に埋没しているに過ぎない。 君も、とっくにそれに気付いているはずだ。 口には出さないにしても。 わかっていながら、君は受け入れようとしている。 僕はどうだ。 受け入れる勇気はあるか? 大きな姿見に、自分を映す。 くたびれた顔をした男が、寝癖のついた頭でぼんやり立っている。 その後ろには、君が眠っている。 僕は鏡の中の君をしばらく見つめた後、 振り返って君の枕元に腰を下ろす。 そっと君の髪に顔を近づけると、 君のにおいがする。 君はまだ眠っている。 僕は残ったコーヒーを飲み干して、 また薄曇の空を見上げる。 窓に切り取られた四角い灰色は、 この部屋の外にはまるで何もないような気分にさせる。 いっそのこと、その方が諦めがつくのではないか、と、 僕は思ったりするのだ。 君は、まだ眠っている。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |