-殻-
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星空がとてもきれいだったんだ。
今夜はすごく寒くて、空気がぱりぱりと乾いていて。 星の輪郭までもがはっきりと分かるくらい、 その光は張り詰めた輝きを放っていて、 なぜかこの街の冬の空気はそれを妨げることなく。 遥か彼方の、遥か遠い昔の光を、 今を生きる僕のこの目の中にしっかりと焼き付ける。 それは何と素敵な、素晴らしい偶然。 願っても願っても、きっと今僕が放つ光が誰かに届くことなど、 時間が止まることよりも低い確率でしかないのに。 全てはそこにあるだけなのだと、 それ以外に真実など何もないのだと、 分かってはいても、現実はとても優しく、 ここにいる僕の実在を肯定してくれる。 そこに意味を見出してしまうことは、 結局は果てしない孤独と空虚を生むに過ぎない。 それでも。 それでもなお、求めて止まないのはどうしてだろう。 気付いて欲しいと、見つけて欲しいと、望むのは何故だろう。 あなたは僕に、気付いてくれますか。 あなたは僕を、見つけてくれますか。 あなたは僕を。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |