-殻-
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僕は今ここにいる君を見ている。
君は何も間違っていなかったと信じたがっている。 僕は全てを肯定しようとする君を憐れむ。 君は愛などないと言う。 薄明かりの中で、君は顔を歪めて、僕に手を伸ばす。 だけどその手は僕には届かず、宙を彷徨う。 その手は何かを求めているはずだ。 それが僕ではないにしても。 君は溢れ出る声を噛み殺す。 シーツに縋り付き、口に押し当て、目を閉じて耐える。 君の薄い身体が捩れ、痙攣する。 僕はようやく君に身を重ね、君の手は僕の背を這う。 君の奥深く、 僕は解き放たれる。 愛などなくていい。 ただ、ひととき夢を見せてくれればいい。 君の手は、僕を抱きしめている。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |