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遺書と屍
羽月
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2010年03月11日(木)


わたし みたいな にんげんは
しんでしまえばいいって
ドアノブに下がり続けるリボンで首を吊った
死ぬ気なんてなかったよ
そんなの知ってたよ
死ぬ気ならリボンの端を自分の手で握っていたりしない

ちょっと血が止まるだけ
ちょっと息が止まるだけ
くらくら眩暈がして何にも見えなくなって怖くなって手を離す
二回繰り返した
一回目と二回目の間はうまくいかなくてただ気道を締め付けただけだった

死ぬ気なんてなかったよ
知ってたよ
死ぬ勇気なんかなかったよ
そんなのどこにもないよ
しぬのってこわいもん
どこにいくのかわかんないもん
手を離したのはただそれだけの理由


しねばいいのに ほんとしねばいいのに
ほんと、しんじゃいたいよ うそつき
見栄っ張りに声を殺して泣いた
蹲って右手を掻き毟って泣いた
涙はただ前髪を濡らした

たとえば大声で泣いたなら 腕に傷跡を残せたなら
たとえばわたしが死んだなら
何か変わるだろうか 変わっただろうか

わたしは かわるのはいやなんだ


*


傷が欲しい 罰が欲しい
いらない いらない そんなのいらない
矛盾ばっかり
いつしんでしまえるんだろう
いつうっかりしんでしまえるんだろう
いつわたしはリボンの端を離さずにいられるんだろう
いつになれば、変化を怖がらずにいられるかな
春なんて来なければいい
明日なんていらない
ずっと夜のまま留まっていたい
雨なんかやまなくていい
涙なんて乾かなくていい
わたしはわたしのまま、このまま、ここにいたい
できない
できない


*


明日なれば笑うことも
涙を誤魔化すことも
前向きにだってなれる
日は昇るし、風は吹く
花は芽吹くし、涙も乾く

それでもリボンは解けない