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「暗幕」日記

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2002年10月21日(月) 理解されることと受容されること

他人に自分を理解してほしいと切望している君は二つの点で間違っている。他人に理解されるという事象が滅多に起こらないということを君が認識していないことと、自分について理解されたい事項を君が一切説明していないという二つの点で。

私は物書きだ。体験していないことを想像し自分と異なる主体のメカニズムをシュミレートして他人の感情や思考をある程度は実感することもできる。おそらく君にもできなくはないだろうと思う、想像して欲しい。一生経験したくない体験(事故・事件)を不幸にも自ら負ってしまった人のことを。その人の少なくとも一部は、体験の前と後で変質してしまった。その部分も自分の一部で、切り離して捨てるということはできないので、仮に自分のすべてを理解してもらおうと思ったらそれを体験した自分についても理解されなければならないということになる。
君は自分を理解してもらいたい他人に、その体験を話したいだろうか。自分のことをよく知ってもらって親しくなりたいと思っている他人に。その体験は、自分でも経験しなければよかったと思うし、それを知っている自分の脳や、手足を切り捨てたいほどの酷い体験だというのに。そして、言葉で描写することによって、再び追体験したいとも思うまい。

変質してしまった君の一部は誰からも理解されないままで、だから君はいつまでも寂しい。
その寂しさと同じ種類のものを抱えている他人が珍しくもないことに君はまだ気づいていない。

君が抱えているそれが何だかまだ私は知らない。上の例はたとえ話で、君が実際にそういった経験をしたかどうかは私は知らない。いずれにせよ説明できない何かを持っていて、それを含めてまるごと理解されたいと望んでいるのが君だと私は理解している。君は説明できない。しかし君のあらゆる行動は、君の本当の願いを訴えている。そしてそれは理解されている。君に近づいてきてああだこうだ言うのは、君を理解したいがためだ。君の願いは叶いかけているのに、他ならぬ君が、その可能性を閉ざしている。

君を理解しようと君に質問してくる他人を君は信用せず遠ざけている。

君の存在は許容されている。だからこそ君を理解しようと人が集まってくる。
君は自分からは何も言わずに察して欲しいと思っている。仮に君が新生児なら、君の欲求は単純で、ミルクかおむつかどちらかなので他人は簡単に満たせる。大きくなってしまった君の欲求はもっと複雑で、だからこそ君自身も少しは努力しないと他人は理解できない。

気づいてくれ。幸せの必要条件は、他人に理解されることではない。他人に存在が受け入れられることだ。


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