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2011年01月10日(月) 2011年為替見通し.焦点:ドル年末にかけ90〜95円に上昇か?

2011年為替見通し.焦点:ドル年末にかけ90〜95円に上昇か?



[東京 ロイター] ロイターが為替市場関係者を対象に12月下旬に実施した調査によると、2011年のドル/円については、米景気の緩やかな回復を背景に米連邦準備理事会(FRB)の緩和スタンス後退が徐々に視野に入るため、年末にかけてドルは90─95円程度まで上昇するとみる声が多い。 

 ドル/円の下値については、過去最安値(79.75円)を割り込むことはないとの見方が多いが、更新する可能性を指摘する声も出ていた。一方、ユーロ/ドルについては春頃までソブリンリスクで下値リスクを見込む声が多く、ポルトガルやスペインの国債償還を乗り越えたあとは反発に向かうと予想されている。



● <米金融政策> 

★ドル/円が下値をつけるのは年前半。クレディ・アグリコル銀行の斉藤氏は「終了期限である2011年6月をめどに、ドル/円相場がQE3の有無をめぐる思惑で荒れる展開になる懸念も捨てきれない」としている。市場参加者の多くはレンジの下値を80円以上とみており、ドル/円が過去最安値(79.75円)を割り込むことはないとの見方だが、最安値更新を見込む参加者もあった。



 2011年のドル/円をみるうえでの焦点は、米国の金融政策だ。

 2010年11月に踏み切った量的緩和第2弾(QE2)は、2011年6月まで続く予定。

QE2後に米国の金融政策について緩和スタンス後退や非伝統的な金融政策の出口を意識し始めるのか、それともQE2の拡大、ないしQE3に向かって緩和スタンス再拡大を意識するかがポイントになる。

 「デフレからの脱却目処が立たない我が国において、日銀は2011年を通じ量的緩和状態を維持する可能性が高い」(三菱東京UFJ銀行金融市場部チーフアナリスト、中村明氏)ことから、日米金融政策の差は、米国のスタンスの変化によって決まるとみられている。

 市場では、米景気の緩やかな回復を背景に、FRBは「QE2を予定通り6月までで終了し、QE3は実施されない」(クレディ・アグリコル銀行外国為替部ディレクター、斉藤裕司氏)とみる声が多い。

 「市場参加者は米経済にぜいたくな回復は期待していない。出口戦略にいかなくても、追加緩和がないとなるだけでも雰囲気が変わる」(外為どっとコム総合研究所の植野大作社長)という。 


「米国の家計のバランスシート調整は住宅ローンを中心に負債が減少、金融資産が増加と徐々に改善しており、失業率は高水準だが、失業保険給付期間の延長継続が決定したことで、2011年も所得水準は大きくは落ち込まないことが見込まれる。結論として、2011年にQE3が実施される可能性より、QE2で終了する可能性を高く見ている」と三井住友銀行、市場営業統括部のチーフエコノミスト・山下えつ子氏は言う。 

 「年央にかけて、米国のインフレ率が適正水準まで上昇し、失業率が低下するなど、FRBのデュアル・マンデートを達成する公算が高まれば、為替市場では、量的緩和の終了がテーマとなるだろう。この場合は、実体経済の拡大に沿った金利上昇となり、ドル/円の上昇する余地が広がる」(バークレイズ銀行チーフFXストラテジスト、山本雅文氏)との声が出ている。

 このため、

 みずほ証券為替アナリストの鈴木健吾氏は「年前半は量的緩和第3弾(QE3)も含め、米国で追加緩和が話題になる可能性もあり、ドル/円は史上最高値(79.75円)を更新する場面があるかもしれない」とみている。

 このところの米経済指標の改善に加え、大規模な米緩和政策によるインフレ期待で、米長期金利はすでに上昇を始めている。クレディ・スイス証券チーフ通貨ストラテジストの深谷幸司氏は、こうした流れは2011年を通じて続くと予想、2011年末の時点の米10年債利回りは4%まで上昇する可能性もあるとみている。これがドルを押し上げるとみており、2011年末のドル/円は90円程度を予想しているが、日米金利差の拡大から、92─93円に達してもおかしくないとしている。

 ただ、米量的緩和からの転換が利上げまで進むとみる声は乏しい。みずほコーポレート銀行マーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は、2011年も近いようで遠い金融政策の「出口への距離感」に振り回されるとみており「来年の今頃も『来年の今頃には1回ぐらい利上げしているのではないか』という想いを抱き続けている気がしてならない」としている。 

 <ユーロ> 

 ユーロ/ドルについては、当面はソブリンリスクをにらんでユーロ下落を見込む声が多い。
ただ「ユーロは短期的に下落リスクが高いが、スペインへのソブリン危機波及はEUが政治的に阻止するとみている。ユーロ圏周縁国の危機は収束するだろう」(バークレイズ銀行、山本氏)との声や、「4月のポルトガル・スペインの国債大量償還・借り換えまでがひとつの山場」(クレディ・スイス証券、深谷氏)などの声が聞かれ、ソブリンリスクによるユーロの下値リスクは春頃には収束するとの見方が出ている。

 「2010年には、『ユーロ崩壊』が帰結だとする見方も多かったが、欧州では個々の国の事情や感情論を超えてユーロを継続する姿勢に変化はなく、これを見ながら市場にも耐性がでてきた。ユーロは2011年も特にドル買い戻し場面では売られやすいが、ユーロの下落がマーケットを震撼させる可能性は低いだろう」と三井住友銀の山下氏は言う。  

 ソブリンリスクは基本的に欧州周辺国の問題であり「ユーロ圏全体でユーロ安や世界景気回復の効果により景気は回復している。小国のソブリンリスクの影響によるユーロ安はドイツなど大国の輸出と景気にプラスに働いている」(大和総研チーフ為替ストラテジスト、亀岡裕次氏)。このため、ソブリンリスク一巡後はユーロは反発に向かう見通し。バークレイズ銀行の山本氏は1.44ドルまで上値余地を見込んでいる。 

 他方、ユーロ圏の成長率は米国に比べて回復が鈍いとの指摘も多く「市場で織り込まれているECBの利上げシナリオが、修正される可能性がある点はダウンサイドリスク」(野村証券金融市場調査部、シニア為替ストラテジストの池田雄之輔氏)という。

 三菱東京UFJ銀行の中村氏は、独自の財政運営を許容したままの通貨統合という試みの歪み解消に時間がかかるほか、鮮明化する米国景気回復との対比も視野に「ユーロは上値の重い1年になる」と予想。2011年の年末にかけて下値を切り下げる推移を見込んで10─12月期のレンジを1.19─1.28ドルとみている。

 (ロイター日本語ニュース 松平陽子)




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