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2009年11月03日(火) |
JAL再建、年金債務圧縮に法的整理も浮上 |
焦点:JAL再建、年金債務圧縮に法的整理も浮上
2009年 11月 2日 14:46 JST [東京 2日 ロイター]
日本航空(JAL(9205.T))が、公的機関の「企業再生支援機構」を活用し事実上国の傘下で再建を進める方針が打ち出された。一方で再建の最大の障害の1つである年金債務の圧縮については具体的な方策はみえておらず、民主党内では会社更生法の適用を真剣に検討すべきとの声も出てきた。
公的資金注入に財務省が難色を示し続ける中、JAL再建は視界不良のまま第2幕に突入した。
JALの再建は、前原誠司国土交通相の直属の専門家チーム「JAL再生タスクフォース」(リーダー高木新二郎・野村証券顧問)が9月末以降、1カ月間にわたり計画を作成してきたが、一転して今後の取り組みは支援機構に委ねられ、計画も練り直される。金融機関がタスクフォース案の年金債務圧縮計画の実現性に疑問を抱き、財務省も年金問題が解決しないと公的資金の注入は難しいと難色を示したためだ。
タスクフォースの試算によると、JALは「存続を前提とすれば総額2700億円の債務超過、清算せざるを得ないと仮定した場合最大8000億円の実質債務超過」(タスクフォース関係者)となる。
このため再建計画として、総額2500億円の債権放棄・債務株式化、3000億円の官民出資による資本増強、および3300億円の年金積み立て不足を1000億円までの圧縮などを提示した。年金債務圧縮のため、給付利率を従来の4.5%から1.5%に引き下げるか、希望するOBには本来受け取れる金額の現在価値分を一括支給する案も示していた。
タスクフォースの高木氏や冨山和彦サブリーダーらは旧産業再生機構でカネボウを再建する際、厚生年金基金を解散し、あるだけの積み立て分を現役とOBとで公平に分けた。
しかし、JALは厚生年金の代行部分を返上し、確定給付型の企業年金に代わっているため「カネボウのような『あるだけ解散』が使えない」(タスクフォース関係者)という事情がある。確定給付年金法は、給付額を減額する場合には、1)経営が悪化、2)受給権者の3分の1以上の同意が必要を条件としており、JALで年金受給権を持つ退職者9000人のうち、11月1日時点で3710人が減額に反対している現状では、年金減額に対して厚生労働省の認可が下りない。
年金債務圧縮への明確な解決策が見えない中、民主党内には法的整理に活路を見出せないかと模索する動きも出てきた。ある民主党議員は、大手弁護士事務所のTMI総合法律事務所(東京都港区)に対し「給付額が著しく多く、深刻な積立不足が生じている確定給付企業年金制度について、当該企業が会社更生手続きを開始する場合、企業年金債務の取り扱いはどうなるか」と質問したところ、同法律事務所の坂井豊弁護士らは29日付で「支払額の3分の1まで最大限圧縮することは理論上可能」との回答を書面で提出した。
可能である理由として、年金債権は一般債権よりも優先される優先的更正債権であるが、相対的に優位に扱われれば、優先されることになるとの解釈を示し「例えば、一般債権の弁済率が10%である場合、年金債権の弁済率を20%として8割のカットをしても、相対的優先原則には反しない」と指摘した。
ただ、一般的には退職年金には「賃金の後払い的性格があることから、その3分の1が(更正手続きで優先される)共益債権になるのが原則」と説明している。この見解を先の民主党議員は、今後財務省側などに伝える予定だとしている。
これまで前原国交相は「JALの法的整理はさせない」と繰り返し強調、タスクフォースメンバーや金融機関側も「法的整理となれば、燃油などすべて現金払いになるため、つなぎ融資が1兆円近く必要になる」(メガバンク関係者)と慎重な姿勢を示してきた。
しかし、国交相やタスクフォースから公的資金を要請された財務省は「JAL問題はあくまで国交省の問題。再建後どのような絵(将来像)を描いているかが大切」(中堅幹部)と主張。明確な成長戦略が欠如したまま、公的資金でJALを延命させるシナリオに強く抵抗を示す構えも見せている。
年金債務の削減に、法的整理しか道がないのであれば、米ゼネラル・モーターズ(GM)のような再建型の法的整理が真剣に検討される可能性も残されているようにみえる。
(ロイターニュース)
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